研究課題/領域番号 |
20K08487
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中島 忠 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (40510574)
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研究分担者 |
倉林 正彦 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00215047)
金古 善明 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (60302478)
西山 正彦 群馬大学, その他部局等, 名誉教授 (20198526)
川端 麗香 群馬大学, 未来先端研究機構, 講師 (90721928)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 遺伝性不整脈 / 遺伝性QT延長症候群 / SCN5A / CACNA1C / 機能異常 |
研究実績の概要 |
我々は、次世代シークエンス及び電気生理学的手法を駆使し、新規遺伝性不整脈の病態解明及び治療法の基礎を確立すべく研究を行っている。 パネル解析(72個の遺伝子)の結果、エピネフリン負荷で著明なQT延長をきたした遺伝性QT延長症候群(LQTS)家系(発端者は心肺停止蘇生後)にSCN5A V1667I変異を同定していた。通常、SCN5A変異によるLQTS (LQT3)は、エピネフリン負荷では著明なQT延長はきたさないことから、本家系は遺伝子型-表現型の観点から特異である。野生型SCN5A、V1667I SCN5AをtsA201細胞に発現させ、パッチクランプ法にて機能解析を行った結果、V1667Iはナトリウム電流(INa)密度の増加、不活性化曲線の脱分極シフトをきたし、INaの機能増強を認めた。さらに、PKA activatorである8‐CPT‐cAMPを投与した結果、V1667Iでは野生型と比べ不活性化曲線の過分極シフトは小さく(window currents増強)、さらに機能増強を認めた。LQT3ではβ遮断薬の有効性は未確立だが、本変異のキャリアでは有効であることが示唆され、本研究はLQT3におけるβ遮断薬治療確立の一助となり得る。 さらに、LQTS家系にCACNA1C R511Q新規変異を同定した。CACNA1C変異により、LQTS(LQT8)だけでなく心外病変を有するTimothy症候群 (syndromic LQTS)をきたすことが知られているが、non-syndromic LQTSをきたすことも報告されている。本家系においても、心外病変は明らかでなく、LQTSの遺伝子解析においてはCACNA1Cのスクリーニングも重要と考えられた。LQT8の臨床像や最適な治療法については不明の点も多く、カスケードスクリーニングを拡大することにより臨床像の解明や最適な治療法の確立につながる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症患者数の増加によりその対応に追われ、新規遺伝性不整脈症例の集積は減少し、また、遺伝子解析、機能解析実験も遅延している。 これまでにCACNA1C, CACNB2, CACNA2Dプラスミドを入手し、CACNA1C R511Q変異を作成した。今後、培養細胞株発現系を用い機能解析を行う。 また、LQTS家系にSCN5A R1644L新規変異を同定した。すでにSCN5A R1644L変異を作成しており、今後、培養細胞株発現系を用い機能解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
CACNA1C R511Q変異によるLQT8家系において、カスケードスクリーニングを拡大し臨床像を集積し、遺伝子型-表現型を明らかにする。また、CACNA1C R511Q変異を培養細胞株に発現させ、機能解析を行う。さらに、カルシウ電流(ICa)はβ刺激により増強することから、野生型と変異でβ刺激によるICaの修飾を比較検討する。臨床データの集積と機能解析実験データより、最適な治療法の基礎を確立する。 一方、SCN5A R1644L変異はdomainⅣ-segment4(DⅣS4)-細胞内loopのR8(8番目のアルギニン)に位置する。SCN5AのDⅣS4はチャネルの活性化・不活性化において重要な役割を果たすことが明らかとなっている。R1,2とR3,4の変異では機能異常が大きく異なることが明らかとなっているが、R/K5-8の構造-機能連関について未解明であり、本変異の機能異常を解明することはチャネルの活性化・不活性化に関する新たな知見をもたらす。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症患者対応のため、研究に費やす時間が制限され、遺伝子解析・機能解析実験ともに遅延しました。 そのため遺伝子解析・機能解析で使用する試薬等の購入が予定より少なかったため、次年度使用額が生じました。
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