研究課題/領域番号 |
20K08488
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
東邦 康智 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10586481)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心不全 / RNA代謝 / RNAヘリカーゼ |
研究実績の概要 |
2021年度は、ラット新生児由来心筋細胞を用いたRIP-seq及びIP-MSによるRNAヘリカーゼの結合標的RNA及び蛋白質の同定、及び遺伝子改変マウスの解析及び作成を行った。 まず、FLAGタグ標識RNAヘリカーゼをレンチウィルスベクターを用いて過剰発現させた心筋細胞を用いて、RIP-seq及びIP-MSを行った。解析の結果、RNAヘリカーゼの結合標的RNA及び蛋白質を明らかにした。特に、我々が心不全発症との関連性を見出している炎症関連因子のRNAや蛋白質との結合を確認した。結合による炎症関連因子のRNA及び蛋白質レベルでの構造の安定化が心不全発症と関係してる可能性が示唆される。 遺伝子改変マウスについては、心筋細胞特異的RNAヘリカーゼ過剰発現マウスの解析を行った。同マウスは若年時は野生型マウスとその表現型に違いは認めなかったが、加齢に伴い、全身の表現型に違いを認めた。また、若年マウスにおいては、圧負荷による心不全が悪化することを明らかにした。圧負荷を加えていない過剰発現マウスでは、野生型マウスとその表現型が変わらなかったことから、RNAヘリカーゼはストレス応答性因子と相互作用することが示唆される。 RNAヘリカーゼのfloxマウスの作成については、CRISPR技術を用いたLoxP配列の導入を試みている。5'側と3'側の同時挿入を試みたが、目的とするマウスが得られなかった。そのため、3'側のみの挿入を行った。目的マウスを得られたため、現在、5'側の導入に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度はRIP-seq及びIP-MSの解析を終了しており、ラット新生児由来心筋細胞を用いた解析はおおむね順調に進んでいる。 遺伝子改変マウスについては、心筋細胞特異的RNAヘリカーゼ過剰発現マウスの解析は順調に進んでいる。RNAヘリカーゼのfloxマウスについては、3'側への挿入のみ成功しており、予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
心筋細胞特異的RNAヘリカーゼ過剰発現マウスの解析を進めて、RIP-seq解析及びプロテオーム解析で得られた因子や想定される機序が圧負荷心不全で重要な役割を果たしているかどうかの解析を進める。また、過剰発現マウスが加齢により興味深い表現型を示したことから、その病態生理の解明を進めていく。さらに、心筋梗塞モデルなどの他の心疾患モデルを用いた検討を行う。 引き続き、RNAヘリカーゼのfloxマウスの作成を続ける。目的のマウスを得た後、様々な心不全モデルでの表現型を検証する。
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