研究課題
心筋に多く発現する分子の一つであるRhoAに着目して老化と心機能低下との関連を解析した。RhoAはRhoファミリー低分子量Gタンパク質に属する分子である。本研究では、独自に作製した心筋細胞特異的RhoAコンディショナルノックアウト(cKO)マウスを活用した。Rho cKOマウスは加齢と共に心機能が著しく低下し、心不全となって生後1年以内にほぼ全例が死亡した。摘出した心臓を解析すると、老化マーカーであるp15、SA-β-Galの発現が有意に増加していた。電子顕微鏡による観察から、心筋細胞内のミトコンドリアは全て異常な形態となり、機能消失していた。その後の生化学的解析により、ミトコンドリアの品質管理機構の一つであるマイトファジーが阻害されているため、障害を受けたミトコンドリアを処理することが出来ず形態異常を来したミトコンドリアが蓄積していることを突き止めた。さらなる研究により、このミトコンドリア形態異常はRhoAの欠失によるParkinの発現低下が原因であることを見出した。RhoAがParkinの発現を制御する分子機構としては、RhoAのエフェクター分子Rho-キナーゼや、n-Mycが関与していることも明らかにした。そこで、RhoA cKOマウスにアデノ随伴ベクター(AAV)を利用して、心筋でのParkinの発現を回復させると、RhoA欠失による心機能低下や心不全は改善し、寿命も改善した。また、ミトコンドリアの形態異常もほぼ消失した。最後に、心不全患者についても解析を行った。それまでの遺伝子解析で心不全を引き起こす既知の遺伝子異常を有しない原因不明の中年以降の心不全患者について、心筋生検サンプルを調べたところ、RhoAの発現が低下し、ミトコンドリアの形態異常も認められた。以上より、RhoAは心筋老化を阻止する重要な分子であることと、その分子メカニズムを解明することができた。
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