研究実績の概要 |
本研究は心筋梗塞による心不全病態ががん進行に与える影響を検討するものである。昨年度までの検討でマウス由来乳がん細胞である4T1細胞を接種した心筋梗塞Balb/Cマウスはshamマウスと比較して、がんの進行が顕著であり、細胞増殖マーカーである、Ki-67の発現も増加しており、心不全状態では腫瘍増殖が促進されることを現象として確認した。in vitro実験において神経栄養因子であるNGFが4T1細胞を増殖させることが判明し、心筋梗塞マウスにおいて血中NGF濃度が上昇していることも確認できたため、4T1細胞にあるNGFの受容体であるTrkAが腫瘍増殖のメカニズムに関与すると予想した。本年度はVivoでの効果を確認するため、TrkA阻害薬を乳がん心筋梗塞マウスに投与し腫瘍抑制効果が得られるか検討を行った。心筋梗塞作成2週後に4T1細胞をマウスに接種し、TrkA阻害薬腹腔内投与の有無が腫瘍増殖に影響するか確認したところ、TrkA阻害薬投与マウスはがん増殖がshamマウスと同程度に抑制されることを確認した。腫瘍組織のウエスタンブロッティングでも腫瘍組織のリン酸化TrkA, その下流にあるリン酸化AKTともにTrkA阻害薬投与マウスでは抑制されることが確認されたため、心筋梗塞マウスにおいては、血中NGF濃度が上昇し、NGFが腫瘍組織のTrkA受容体を介して腫瘍増殖を促進しているものと結論した。同実験結果は日本循環器学会学術集会および日本腫瘍循環器学会で報告し、現在論文投稿準備中である。
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