研究実績の概要 |
今日の大動脈弁狭窄症(AS)のほとんどは石灰化ASであり、その基本病態である石灰化による弁の硬化の危険因子は冠動脈疾患、すなわち動脈硬化の危険因子とほとんど重複しているが、実際の石灰化AS患者においてはASと動脈硬化の程度がかい離していることも多く、未だ同定されていない因子がASの発症や進行に大きく関与している可能性が高い。本研究では、DNA損傷がASの病因に関与しているか否か検証した。 重症AS患者より、末梢血を採取、単核球を分離し、DNA二本鎖切断の指標として核内のgammaH2AXのフォーカスを免疫蛍光法にて描出し、1細 胞あたりのフォーカス数を算出した。またFISHを用いて二本鎖切断に基づく異常染色体として二動原体染色体を検出した。 AS群は非AS群に比して、DNA損傷が多かったが、男性に比して女性においてその傾向が強かった。また単核球中のいくつかの炎症性サイトカインが、AS群の方が多かった。 一方、TAVI前後のCTの解析により、術前の大動脈弁(特に無冠尖)のCaボリュームがTAVI後のParavalvular leakage発生の予測因子であることが明らかになった(カットオフ値2.3 mLによるROCカーブ: AUC 0.75, sensitivity 0.75, specificity 0.63)。 ASの発症にDNA損傷が関与している可能性があり、新たな成因として注目に値することが示唆された。
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