研究課題/領域番号 |
20K08500
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
松本 直樹 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (80239110)
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研究分担者 |
武半 優子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (50367348)
小林 司 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究技術員 (20822589)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心筋細胞 / 心外膜 / 胎仔 / 心臓 / Yap / Hippo / グルココルチコイド |
研究実績の概要 |
胎児期の心筋細胞増殖機構を解明し、胎児期の能力を成人心筋に誘導できれば心筋梗塞などの心筋修復に応用になるのではと考えている。本研究では、ラットの胎仔期から新生仔期の細胞増殖機構の変化に伴う関連因子の役割を明らかにすることを目的とし、Hippo-Yap経路の役割に着目した。Hippo-Yap経路は、胎児期の心筋細胞増殖に深く関与することが知られている。Hippo経路下流の主要なエフェクターであるYap脱リン酸化されると核内に移行することから、今年度は胎仔期から新生仔期の、ラット心筋組織の成長過程における核内Yapの局在と発現率について検討した。早産児モデルは、妊娠ラットの19日、21日目に帝王切開して胎仔を取り出し、また自然分娩で出産させた日齢1‐5日のラットを新生仔とし心臓組織を摘出した。細胞増殖マーカーのKi-67とCyclin D1の局在と発現率についても検討した。心筋細胞の発達は部位により異なることから、組織を内膜層、外膜層、中間層の3層に分けて解析した。免疫組織染色によりKi-67,Cyclin D1そしてYapの心筋細胞の核内陽性率を計測した。Ki-67 およびCyclin D1の発現は胎仔期で多く、新生仔日齢3日から徐々に減少した。また外膜層で発現率は多く、二つ因子は良く相関していた。内膜層と中間層の心筋細胞は、妊娠後期の胎仔ラットでは低下しており、心筋細胞の増殖能はより早い段階で始まり後期での増殖能は低下していると考えられた。Yap陽性細胞も胎仔期の発現が多く、日齢3日から徐々に減少した。Yap陽性細胞も外膜層に多かったが、Ki-67 およびCyclin D1の発現率との相関は得られなかった。今回の結果は妊娠後期の胎仔の心筋細胞増殖能は外膜側に多いことが明らかになった。Yapの発現は細胞増殖だけでなく、他の働き(細胞分化など)に関与する可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は胎仔から新生仔心筋の細胞増殖機構についてYapの発現率と局在について、細胞増殖マーカーKi-67 およびCyclin D1と比較することにより、Yapの役割が浮き彫りになった。実際に胎仔期から新生仔期の細胞増殖能は、心筋外膜層の細胞において胎仔後期でも活発であることが明らかになった。この点については今後の研究を広げる新しい知見である。さらにここまでの研究成果は誌上で発表することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の結果から、胎仔から新生仔における心筋細胞増殖能は、心筋全体でなく、心筋外膜層の心筋細胞に多く存在することがわかった。今年度は、増殖能の全体的なメカニズムについて検討したいと考えている。下流のエフェクターのYapの発現に影響する、Hippoの上流因子およびHippoに影響を与える細胞外マトリックス(ECM)の因子(アグリン)の発現と機能について解析する。 Yapの細胞増殖能以外の役割について、細胞分化などの関連因子の発現を検討する。また本題である臨床において早産児のステロイド投与を想定したモデルとして、分娩2日前にグルココルチコイドであるデキサメサゾンを妊娠ラットに投与し19日、21日に胎仔の心臓を摘出し、核内Yapの局在と発現率に対する作用を明らかにする。 様々なメカニズムは胎仔心筋組織の蛋白発現は免疫組織染色による局在だけでなく、ウエスタンブロッド法を取り入れた全蛋白の発現量の解析も行う。またデキサメサゾンのHippo-Yap経路への影響を胎仔心筋細胞の初代培養を樹立し確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍により、実験試薬の購入において輸入困難による価格の高騰、製品の在庫欠品により、実験に必要な試薬や消耗品が購入できないことが多かった。また実験自体の規模を縮小せざるをえなかったので、実支出金額が抑えられた。 今年度は計画当初のラットの培養心筋細胞による胎仔細胞増殖機構の機能解析を行うため 培養に必要な、特殊培養液、単離用試薬などの購入が必要となる。前年度、手に入らなかった抗体やキットなどを購入し、研究を進めていく予定である。
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