研究課題
2021年度も2020年度に引き続き、研究に十分な患者数と検体数を確保できるよう心臓血管外科で開心術が予定された心房細動患者を本研究に登録した。分子生物学的な研究結果をバイオマーカーによる臨床評価へ応用するために、心房組織の検体採取にあたっては、同一患者から血漿、血清も保存した。昨年度、心房細動患者における左房と右房の組織を用いたmRNAの網羅的解析において両心房間で発現差を認めた標的遺伝子に対して定量PCR、ウエスタンブロッティングを行い発現差の再現性を確認した。2021年度は同一組織でのマイクロRNAの網羅的解析を追加し、2020年度で行ったタンパク・mRNAの網羅的解析の結果と合わせてIPA(ingenuity pathway analysis)解析を行うことで、左右それぞれの心房リモデリングと左右差に関与するシグナルパスウェイの推定を行った。現在、バイオインフォマティクスで得られた結果に対して実験的な検証を行っている。また、本研究は、心房組織の中でも心外膜脂肪組織の病態への関与に着目しており、2021年には組織染色(ヘマトキシリンエオジン染色、Masson Trichrome染色、Oil red O染色)を開始し、現在も心房線維化やEAT脂肪細胞の心房組織への浸潤、EAT脂肪細胞や脂肪滴の形態の左右差を評価している。また、心臓CTで得られた心外膜脂肪組織の画像所見と組織染色の所見とを比較し、組織レベル変化を臨床的に評価する方法を現在模索している。
3: やや遅れている
2020年度、2021年度はCOVID-19感染の拡大によって受診患者する減少し、例年に比べて対象となる疾患の心臓外科手術数がやや少なかった。このため、今後予定していた全ての実験解析を行うのに十分な検体の数が足りていない状況である。また、次世代シーケンサーを用いた遺伝子の網羅的解析とタンパクのプロテオーム解析を行に加え、2021年度はmRNAの網羅的解析とバイオインフォーマティクスを用いたパスウェイ解析を追加しており、当初の予定していた実験に関しては多少進行が遅れている。
2020年度、2021年度は遺伝子の網羅的解析とタンパクのプロテオーム解析から新知見を得た。これにより、新たな機序の仮説と方向性も見いだされた。2022年度においても対象となる患者を登録し、予定していた全ての実験と網羅的解析を基にした新たな仮説の検証実験を十分に行えるだけの検体数を採取する予定である。現在行っているパスウェイ解析、心外膜脂肪組織の臨床画像評価、組織染色評価は2022年も継続的に行う予定である。また、2022年度にはパスウェイ解析から病態への関与が推定されるシグナルに関して分子発現レベルをウエスタンブロッティングや免疫染色で確認する予定である。実験の進行がやや遅れおり、2021年度に行う予定であったEATの組織培養と分泌タンパクの解析を行い、神経液性調節組織として右心耳・左心耳の役割につき2022年度に評価する予定である。さらに、心房細動リモデリングの進行に伴って左右の心房間で大きく差を認める遺伝子・タンパク・mRNAに関しては、心房組織を採取した同一患者から血清や血漿における発現も評価し、バイオマーカーとしての有効性も評価する予定である。
理由:未使用額が生じたものの少額であり、概ね計画通り使用している。使用計画: 実験試薬などの消耗品の購入に使用する予定である。
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