研究分担者 |
川島 篤弘 独立行政法人国立病院機構(金沢医療センター臨床研究部), その他部局等, その他 (20242563)
松本 康 独立行政法人国立病院機構(金沢医療センター臨床研究部), その他部局等, その他 (20262579)
笠島 里美 金沢大学, 保健学系, 教授 (20444200)
尾崎 聡 金沢大学, 保健学系, 助教 (40401921)
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研究実績の概要 |
IgG4関連血管病変(IgG4-VD)は,血清IgG4高値や動脈外膜を中心としたIgG4陽性細胞浸潤を特徴とする炎症性動脈病変の新しい疾患概念である.IgG4-VDでは組織学的診断が困難な例があり,より確実な診断指標が求められている.申請者らは,IgG4-VD組織内に出現する炎症細胞が,Th2や制御性T細胞優位のT cell populationを呈する事,好酸球,M2組織球,樹状細胞などの多彩な免疫細胞が協同して病態を進行させる事を解明してきた.近年,濾胞性T細胞は,濾胞内でB細胞の形質芽細胞への分化誘導,濾胞の調整を行い,各種自己免疫性疾患に関連する事が報告されている.異所性リンパ組織(三次性リンパ組織;TLOs)のうち,動脈外膜に形成されるもの(ATLOs)がIgG4-VDに存在する事はこれまで報告されてきたが,その意義は不明であった.本研究では,IgG4-VDにおけるATLOsの数,分布や形状,ATLOs内の免疫細胞の分布や発現形式を解析する事により,ATLOsとIgG4-VDの病因, 病態並びに病期の関連性を解明する. 血管検体ではATLOsでは数が少なく形状が不明瞭であり,リンパ節や唾液腺のIgG4関連疾患のTLOsを用いて条件設定を行い,TLOs及び濾胞性T細胞を同定できるような解析手法を確立した.リンパ節や唾液腺のIgG4関連疾患のTLOsが数,面積が大きく,形状不整であることがいえ,今後,血管病変での評価の参考にする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の目標はIgG4-VDの病理組織学的解析であった.以下のように概ね予定通りに解析が進行している. (1) IgG4-VDにおけるATLOsおよび免疫細胞の解明 IgG4-VDのホルマリン固定パラフィンブロックの組織検体の免疫染組織標本に対して,画像解析アプリケーションを用い,ATLOsの数・分布・形状の解析を進めた.血管検体ではATLOsでは数が少なく形状が不明瞭であり,リンパ節や唾液腺IgG4関連疾患のTLOsを用いて条件設定を行い,Tfh,Tfrを同定できるような解析手法を確立した.二重免疫染色によるTfh, Tfrの同定も行った. (2) 対照群におけるATLOsおよび免疫細胞の分布の解明 健常大動脈及び対照疾患群として動脈硬化性腹部大動脈瘤,IgG4非関連炎症性大動脈瘤,高安病,巨細胞性動脈炎の選択を進め,前項(1)と同様にATLOsやTfh, Tfrの免疫細胞を同定するための免疫染色を施行し,その解析は現在進行中である.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の目標は以下の2点である. (1) ATLOsとIgG4-VDの関連性の解明 2020年度に得たIgG4-VDと対照群の解析結果について統計解析を進める.追加の免疫染色が必要なら検討する. (2) IgG4-VDにおける濾胞関連免疫細胞の末梢血の解析 Tfh,Tfr,好酸球,好塩基球,肥満細胞の出現数を解析する為にフローサイトメトリー使用の条件設定を行う.IgG4-VDと対象疾患群の患者の末梢血の入手を随時行い,フローサイトメトリーでの検討を進める.
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