研究課題/領域番号 |
20K08506
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
大谷 健太郎 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 上級研究員 (50470191)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心臓リモデリング / 心肥大 / 授乳 / 周産期心筋症 / ナトリウム利尿ペプチド |
研究実績の概要 |
これまでに我々は心臓ホルモン・ナトリウム利尿ペプチド (ANPおよびBNP) の共通の受容体であるGuanylyl Cyclase-Aの遺伝子欠損マウス (GC-A-KO) が、産褥期に周産期心筋症様の心機能低下を伴う顕著な心肥大・心線維化を呈することを明らかにした。さらに、産褥期GC-A-KOにおける顕著な心肥大変化が授乳により惹起されることを併せて見出した。GC-A-KOでは授乳により血漿アルドステロン濃度が有意に上昇しており、中枢神経特異的にミネラロコルチコイド受容体(MR)を欠損させたマウスと掛け合わせることにより、産褥期GC-A-KOにおける心肥大変化が有意に抑制されることから、中枢神経におけるアルドステロン-MR系の賦活化がGC-A-KOにおける授乳誘発性心肥大を誘導すると考えられる。本年度は、未妊娠の野生型マウスにアルドステロンの脳室内投与を実施し、GC-A-KOで見られる授乳誘発性心肥大様の変化が誘発されるか否かについて検討を行った。野生型・雌性マウスの脳室内にアルドステロンを9 μg/mLで2週間持続投与し、収縮期血圧の測定および心重量計測を行った。その結果、アルドステロン投与により収縮期血圧は軽度ながらも有意な上昇を認めたが、心重量に有意な変化は認められなかった。このことから、授乳により誘発される周産期心筋症様の心肥大変化は、単に中枢神経におけるアルドステロン-MR系の活性化だけで誘導されるものでなく、妊娠・授乳に伴う母体環境の変化が重要である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに研究が実施できており、GC-A-KOにおける授乳誘発性心肥大に妊娠・授乳に伴う母体環境の変化が関与する可能性を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、未妊娠および授乳期GC-A-KOへのアルドステロンの脳室内投与により、周産期心筋症様の心肥大変化の出現・増悪が誘発され得るか、またGC-A-KOにおける授乳誘発性心肥大がマクロファージ除去により抑制し得るかについて検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナウイルスの影響により、在宅勤務の励行や動物実験施設の一次閉鎖、学会のオンライン開催に伴う出張旅費の大幅な削減により、研究費使用額が当初の予定額を下回った。次年度はより綿密な実験計画を立てて研究を推進するとともに、コロナウイルス感染拡大防止に努めつつ積極的に情報発信を行う予定である。
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