これまでに我々は、ナトリウム利尿ペプチド受容体Guanylyl Cyclase-Aの遺伝子欠損マウス(GC-A-KO)が、産褥期に周産期心筋症様の心機能低下を伴う顕著な心肥大・心線維化を呈することを報告してきた。産褥期GC-A-KOの顕著な心肥大変化は授乳により誘発され、授乳期のGC-A-KOでは血漿アルドステロン濃度の有意な上昇が認められた。また、抗アルドステロン薬の投与や中枢神経特異的にアルドステロンの受容体であるミネラロコルチコイド受容体(Mineralocorticoid receptor;MR)を欠損させたマウスとの掛け合わせにより、GC-A-KOの授乳誘発性の心肥大変化は有意に抑制された。これらの結果から、GC-A-KOにおける授乳誘発性心肥大は中枢神経におけるアルドステロン-MR系の過剰な賦活化により誘導されていると推察された。しかし、中枢神経特異的なMR欠損が、GC-A-KOの心臓における遺伝子発現にどのような影響を及ぼすかは未だ不明である。そこで本年度は、未妊娠および授乳期GC-A-KOの心臓における遺伝子発現、特に心肥大に関連する胎児型遺伝子への中枢性MR欠損の影響について検討を行った。中枢神経特異的なMR欠損により、未妊娠GC-A-KOの心臓におけるNppa、Nppb、Acta1発現は低下傾向を認めた。また、授乳により誘発されるGC-A-KOの心臓におけるNppa、NppbおよびActa1の発現上昇は、中枢神経特異的なMR欠損により抑制されることが明らかとなった。
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