研究課題/領域番号 |
20K08512
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
横山 知行 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (70312890)
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研究分担者 |
前野 敏孝 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00436297)
須永 浩章 群馬大学, 大学院医学系研究科, 研究員 (10760077)
松井 弘樹 群馬大学, 大学院保健学研究科, 准教授 (20431710)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肺気腫 / 遊離脂肪酸 / αアンチトリプシン |
研究実績の概要 |
肺胞上皮細胞の脂肪酸組成を制御するElongation of long chain fatty acid member 6 (Elovl6)の発現と肺気腫との関係を肝細胞特異的Elovl6遺伝子欠損マウスを用いて検討した。 まず、肝細胞特異的Elovl6欠損マウス(Elovl6 LKOマウス)を作製し、肺気腫病変の変化や喫煙曝露による影響を検討した。その結果、全身Elovl6欠損マウスと同様に肺気腫病変が認められ、6ヶ月間の喫煙曝露により増悪傾向を示した。また、Elovl6 LKOマウスではコントロールであるElovl6 floxマウスと比較して、α1-アンチトリプシンの血中濃度の低下が認められた。α1-アンチトリプシンの血中濃度が低下していたことから、肝臓におけるserpinA1(α1-アンチトリプシンのコード遺伝子)の発現を検討した。その結果、全身Elovl6欠損マウスでは好中球エラスターゼ阻害作用の高いserpinA1a、serpinA1bの発現低下が認められたが、Elovl6 LKOマウスではserpinA1a、serpinA1bの発現変化が認められなかった。また、肝臓におけるα1-アンチトリプシンのタンパク発現量についても、全身Elovl6欠損マウスでは発現低下を認めたが、Elovl6 LKOマウスでは変化を認めなかった。さらに、α1-アンチトリプシン抗体による免疫染色を行ったところ、コントロールマウスと比較して、Elovl6 LKOマウスの肝臓において、α1-アンチトリプシンの発現分布や局在に顕著な差は認められなかった。 以上の結果から、全身Elovl6欠損マウスと同様にElovl6 LKOマウスにおいても、α1-アンチトリプシンの血中濃度の低下と、それに伴う肺気腫様病変の増悪傾向が示されたが、その機序は全身Elovl6欠損マウスとElovl6 LKOマウスでは異なる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
野生型マウスとElovl6欠損マウスに喫煙曝露し、RNAシークエンスにより、遺伝子発現の網羅的スクリーニングを行い、病態に重要な遺伝子群を検討する。野生型マウスに対してElovl6欠損マウスで発現が著明に増加している上位40位までの遺伝子で、Serpina1a, Serpina1b, Serpina1c, Serpina1d, Serpina1eという遺伝子が、非喫煙、喫煙曝露のいずれにおいても、Elovl6欠損マウスで著明に発現が増加していることが明らかになった。SerpinA1はα1-アンチトリプシンと呼ばれ、α1-アンチトリプシン欠損症は遺伝性の肺気腫を引き起こす唯一の疾患として知られる。α1-アンチトリプシンは主に肝臓で産生されるため、肺でのSerpinの発現と病態との関連を明らかにするためにはElovl6の発現をII型肺胞上皮および肝臓特異的に欠損したコンディショナルノックアウトマウスの作成が欠かせない。ドキシサイクリン誘導型のⅡ型肺胞上皮細胞特異的Elovl6 欠損マウス作製し、現在、繁殖中である。コンディショナルノックマウスの作製にあたって、自然受精が成功せず、人工授精による繁殖を開始した。また、肝臓特異的Elovl6欠損マウスを筑波大学より譲渡して頂き、本学で繁殖を開始した。さらに喫煙モデルマウスの作製に6ヶ月を要する。従って、本研究の主要課題である遺伝子改変動物による実験が当初の計画より遅延しているため、研究費の使用も一部、令和3年度に繰り越しとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
II型肺胞上皮特異的にElovl6発現を欠損したコンディショナルノックアウトマウスおよび肝臓特異的Elovl6欠損マウスを用いて、肝臓でのα1-アンチトリプシン発現、産生とElovl6発現および肺気腫進展への関与を明らかにする。 今後は肝臓特異的Elovl6欠損マウスと、Ⅱ型肺胞細胞特異的Elovl6欠損マウスで、肺気腫病変に差が認められるかを検討する必要があると考える。そこで、肝臓特異的Elovl6欠損マウスと、Ⅱ型肺胞細胞特異的Elovl6欠損マウスに喫煙曝露を施し、α1-アンチトリプシン濃度,好中球エラスターゼ活性と病変の重症度との関連を解析する。次に、α1-アンチトリプシンの発現や活性を規定する責任脂質の同定を行うために、Elovl6欠損マウスの肝臓から脂質を抽出し、リピドミクス解析を行う。考えられる責任脂質を培養肝細胞に添加し、α1-アンチトリプシンの発現や、培養上清中のα1-アンチトリプシン濃度を測定するとともに、発現制御メカニズムを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
α1-アンチトリプシンは主に肝臓で産生されるため、肺でのSerpinの発現と病態との関連を明らかにするためにはElovl6の発現をII型肺胞上皮および肝臓特異的に欠損したコンディショナルノックアウトマウスの作成が欠かせない。ドキシサイクリン誘導型のⅡ型肺胞上皮細胞特異的Elovl6 欠損マウス作製し、現在、繁殖中である。コンディショナルノックマウスの作製にあたって、自然受精が成功せず、人工授精による繁殖を開始した。また、肝臓特異的Elovl6欠損マウスを筑波大学より譲渡して頂き、本学で繁殖を開始した。さらに喫煙モデルマウスの作製に6ヶ月を要するが、昨年は新型コロナウィルス感染により、実験を行えない期間があり、計画通りに実験が遂行できなかった。従って、本研究の主要課題である遺伝子改変動物による実験が当初の計画より遅延しているため、研究費の使用も一部、令和3年度に繰り越しとなっている。
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