研究課題
我々はこれまで、全身Elovl6欠損マウスに喫煙曝露による肺気腫モデルを作製したところ、野生型マウスと比較して肺気腫病変が著明に増悪することを見出した。また、RNAシークエンスによる遺伝子発現の網羅的スクリーニングを行った結果、Elovl6欠損マウスでは肺気腫の病態に関連する特定のタンパクAの血中濃度の低下、さらにタンパクAの主要な産生臓器である肝臓での発現が著明に低下していることを見出した。そこで、肝細胞特異的Elovl6欠損マウスに喫煙曝露による肺気腫モデルの作成を行ったところ、コントロールマウスと比較して肺気腫病変の増悪、タンパクAの血中濃度の低下、肝臓でのタンパクAの発現低下を認めた。また、培養マウス肝細胞(AML12)を用いて、Elovl6をノックダウンさせたところ、同様にタンパクAの発現低下を認めた。さらに、肝細胞において産生されたタンパクAの細胞外への分泌動態を検討するため、タンパクA遺伝子の発現ベクターを作成し、タンパクAのメディウム中の濃度を検討した。その結果、Elovl6のノックダウンにより、タンパクAのメディウム中濃度が有意に低下することを確認した。さらに、脂肪酸添加で同様の検討を行ったところ、ドコサヘキサエン酸の添加によりタンパクAのメディウム中濃度が有意に低下することを確認した。また、肝細胞におけるタンパクAの動態を免疫蛍光染色で観察したところ、コントロールでは細胞にびまん性にタンパクが認められるのに対し、Elovl6をノックダウンさせた細胞では、細胞膜の周囲に強く染まる傾向を認めた。以上より、肝細胞へのElovl6のノックダウンおよび脂肪酸組成の変化がタンパクAの遺伝子発現および細胞外分泌に影響し、これにより全身および肝臓特異的Elovl6欠損マウスにおける血中濃度の低下を引き起こす可能性が示唆された。
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Sci Rep
巻: 12 ページ: 7338
10.1038/s41598-022-10993-4