ALK肺がん株を用いて、747遺伝子を標的としたCRISPR-Cas9ライブラリーで網羅的に解析した結果、ALK-TKIであるalectinib投与時のALK肺がん細胞の生存が、STAT3に依存的であることを見出した。ALK肺がん株であるH3122、H2228、A925Lにおいて、ALK-TKIとSTAT3阻害薬の併用により、細胞死が有意に強く誘導され、この併用効果は、STAT3により発現が制御されるBCL-XLの発現低下に依存的であることを初めて明らかにした。さらに、A925L細胞のマウス皮下移植モデルにおいて、alectinibと新規STAT3阻害薬であるYHO-1701の併用治療は、alectinib単剤治療と比較して治療中止後の腫瘍再増大を有意に抑制し、in vivoにおいても細胞死を強く誘導することを明らかにした。さらに、ALK-TKI投与時の生存機構について、上流からIL-6R/JAK、FGFR、METなど複数のシグナルによりSTAT3が活性化され、アポトーシス抵抗性に作用するBCL-XLの転写が促進されることを見出した。この結果から、薬剤抵抗性生存機構の上流シグナルは多様であることが示唆され、下流で制御されているSTAT3を標的にすることでより高い有効性が得られる可能性が示唆された。 最終年度には他のドライバー遺伝子異常陽性肺がんにおけるSTAT3によるアポトーシス抵抗性機構について探索的検討を行った。
|