研究課題
Heat shock protein 47 (HSP47)はコラーゲンに特異的な分子シャペロンであり、肺線維症の病態に深く関与している。肺線維症の治療薬を開発する上で、HSP47は有用な創薬標的となり得るため、我々はHSP47抑制物質の探索を目的とした研究を行っている。本研究ではまず大腸菌を用いてヒトHSP47蛋白を作成し、HSP47抑制物質を同定するためのスクリーニング系を確立した。長崎大学が保有している化合物および海洋微生物抽出ライブラリーを用いてスクリーニングを実施し、1023の化合物から3つ、480の海洋微生物抽出物から7つのHSP47抑制物質を同定した。スクリーニングでヒットした化合物の1つはカテキンの一種であるepigallocatechin-3-O-gallateであったが、その類縁化合物を合成し、A環部の5’ヒドロキシ基がHSP47抑制の活性に重要であることを特定した。またヒットした海洋微生物抽出物の1つでは、肺線維芽細胞のHSP47 mRNAとコラーゲン蛋白の発現を抑制した。この物質を高速液体クロマトグラフィーで分離し、上記のスクリーニング系を用いてHSP47を抑制するfractionを同定した。さらにこの部分のfractionを採取し、質量分析、核磁気共鳴を用いて、既知の物質であることを特定した。この物質が肺線維症の抑制効果を有する報告はなかったが、同様に肺線維芽細胞を用いて検証したところ、コラーゲンの抑制効果を認めた。このコラーゲン抑制作用はマウスの肺線維芽細胞でも同様に確認できた。今後はブレオマイシン肺線維症マウスモデルでの抑制効果の検証を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
一部の化合物では、HSP47を抑制することで肺線維芽細胞のコラーゲン産生を抑制することを証明し、海洋微生物抽出物でも肺線維芽細胞のコラーゲン産生を抑制し、抗線維化効果を期待できる物質が同定されているため。
ヒト肺線維芽細胞を使った系では、抗線維化効果を期待できる物質が同定できている。今後は、肺線維症マウスモデルなどを使って抗線維化効果を検証予定である。
実験は順調に進行している。今年度は、研究に必要な物品の購入が予定よりも少なく、残額が発生した。来年度は未使用分も含めて使用計画を立てている。次年度は肺線維症マウスモデルでの効果を確認するために、動物購入や染色試薬等の購入に使用予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件)
Scientific Reports
巻: 10 ページ: 9466
10.1038/s41598-020-66178-4
Journal of Clinical Medicine
巻: 9 ページ: 1045~1045
10.3390/jcm9041045
Respiratory Medicine
巻: 174 ページ: 106184~106184
10.1016/j.rmed.2020.106184
Respiratory Research
巻: 21 ページ: 234
10.1186/s12931-020-01490-1
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 530 ページ: 561~565
10.1016/j.bbrc.2020.07.085
Chest
巻: 158 ページ: 2304~2313
10.1016/j.chest.2020.06.027
ERJ Open Research
巻: 6 ページ: 00184~2019
10.1183/23120541.00184-2019
Respiratory Investigation
巻: 58 ページ: 74~80
10.1016/j.resinv.2019.10.002
European Respiratory Journal
巻: 57 ページ: 2000348~2000348
10.1183/13993003.00348-2020