研究実績の概要 |
肺線維症において重要な役割を果たすコラーゲンの合成において、必要不可欠な分子シャペロンであるHeat Shock Protein 47 (HSP47) が、肺線維症治療薬開発において有望な標的となる。本研究では、この相互作用を遮断する阻害剤として、天然物中分子や抗体などの高分子の開発を目指した研究を行っている。HSP47とコラーゲン分子との相互作用を評価するスクリーニング系を構築し、長崎大学オリジナル合成化合物ライブラリーや海洋微生物抽出物ライブラリーのスクリーニングを行ってきた。この過程で、合成化合物ライブラリーについては、すでにヒット化合物の取得に成功し、細胞レベルでの線維化抑制効果を確認し報告した(Okuno, D., Mukae, H. et al. ChemMedChem. 16:2515-2523, 2021)。一方、海洋微生物抽出物ライブラリーのスクリーニングにおいても、いくつかのヒット抽出物が得られている。そのうち、そこから同定した化合物Aは、コラーゲン産生抑制作用を有している一方で、肺線維症動物モデルへの投与については、体内への吸収に問題があることも明らかとなり、現在誘導体作成の最終段階となっている。また、海洋微生物抽出物のスクリーニングでヒットした中から他のHSP47阻害物質の化合物も同定中である。一方で、肺線維症バイオマーカーとしてのHSP47 ELISA系の開発においては、HSP47をヒト血中、尿中などの体液中で測定し、肺線維化のバイオマーカーとすることを目的に研究を行った。HSP47の測定系としてELISA系を開発しヒトリコンビナントHSP47の測定系は確立したが、血中、尿中のHSP47については疾患特異的バイオマーカーとしての確立ができなかった。
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