本研究はIgAの呼吸器疾患に対する病原性作用とその機序を明らかにし、IgAをターゲットとした治療介入の可能性を探求することを目的とする。これまでIgAの主に呼吸器構成細胞、気道上皮細胞、肺線維芽細胞、気道平滑筋細胞、血管内皮細胞に対する病原性作用を報告してきた。 本研究では、呼吸器構成細胞として重要である肺線維芽細胞および気道平滑筋細胞に対するIgAの役割を明らかにした。IgAは肺線維芽細胞および気道平滑筋細胞からのサイトカイン産生を増強し、その増殖能を亢進することを見出し、英文学術誌へ公表した。また、気道上皮細胞を用いた研究から新規のIgAレセプター、ANXA2を同定し、英文学術誌へ公表した。さらに、IgAが血管内皮細胞の接着分子発現を誘導し、炎症性肺疾患の病態形成に寄与することを見出し、またIgAが血管内皮細胞の老化を引き起こすことを見出し、英文学術誌へ公表した。 気管支喘息モデルマウスとIgAを用いたin vivoの実験を行い、IgAが気管支喘息モデルマウスの増悪を誘導することを見出したが、その機序の全てを明らかにできていないため、更なる検討が必要である。 一方、臨床研究のデータから、喘息患者の血清中IgAが高値である群は、肺機能が低く、末梢血好酸球数が高値であることを見出し、英文学術誌へ公表した。 本研究から、IgAが呼吸器疾患の増悪に寄与する可能性が示唆された。引き続き、in vivoの研究を進める必要がある。
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