研究課題/領域番号 |
20K08527
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
小山 信之 東京医科大学, 医学部, 教授 (30353460)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 間質性肺炎合併肺癌 / lncRNA / エクソソーム |
研究実績の概要 |
令和2年度では、当該施設の倫理委員会に本研究の申請、承認後、間質性肺炎合併非小細胞肺癌3~6例及び間質性肺炎非合併非小細胞肺癌3~6例に対して、診療における外科切除後、間質性肺炎合併非小細胞肺癌の肺癌及び肺癌周囲の間質性肺炎組織、間質性肺炎非合併肺癌の肺癌及び周囲肺組織を患者同意取得後に採取することとした。さらに、採取した各疾患群の肺癌組織、間質性肺炎組織、肺癌周囲正常肺組織からtotal RNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いたRNA-seq解析を行い、その結果から各群のlncRNA発現プロファイルに注目して、間質性肺炎合併肺癌の肺癌、間質性肺炎組織に特有のlncRNA発現を同定することとした。 本研究を東京医科大学医学倫理審査委員会に申請して承認を得た後、対象症例の選定を開始し、臨床検体採取およびtotal RNA抽出のための試薬類を準備した。しかし、新型コロナウイルス感染症流行による診療規模縮小と受診患者数減少から、間質性肺炎合併非小細胞肺癌、間質性肺炎非合併非小細胞肺癌ともに外科切除症例の集積が予定通り進まなかった。間質性肺炎合併非小細胞肺癌に関しては感染の危険性による受診機会減少、間質性肺炎合併非小細胞肺癌に関しては健康診断等の受診数減少が、当初の症例集積予想を下回った要因と考えられ、間質性肺炎合併非小細胞肺癌、間質性肺炎非合併非小細胞肺癌症例ともに集積が3例に満たず、RNA-seq解析に至らなかった。 外科切除症例集積が予定通り進まなかったため、RNA-seq解析の準備を行いながら、当初令和4年度に予定していたエクソソーム解析を迅速に遂行すべく、令和2年度に試薬類の購入、症例の集積を開始し、間質性肺炎合併非小細胞肺癌、間質性肺炎非合併非小細胞肺癌、肺癌非合併間質性肺炎の各症例に対して同意取得後、診療上の血液検査時に10mLの血液を追加して採取する研究に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、RNA-seq解析を用いて間質性肺炎合併非小細胞肺癌に特有のlncRNA発現プロファイルを検出する予定だった。研究計画上、検出には間質性肺炎合併非小細胞肺癌、間質性肺炎非合併非小細胞肺癌に関して、各疾患群3~6例を解析する必要があると予想し、各疾患群3例集積時点でRNA-seq解析を行い、目的とする間質性肺炎合併非小細胞肺癌に特有のlncRNA発現が同定されなかった場合、さらに各疾患群3例を解析する予定としていた。しかし、新型コロナウイルス感染症流行により、病院の診療規模縮小が生じて受診患者数が著明に減少し、間質性肺炎合併非小細胞肺癌に関しては該当する間質性肺炎のうち、特発性肺線維症に合併する非小細胞肺癌症例の集積が顕著に停滞した。間質性肺炎非合併非小細胞肺癌に関しては症例の集積とともに、目的とする間質性肺炎合併非小細胞肺癌症例と臨床病理学的特徴が可能な限り合致する対象症例の抽出に難航した。さらに、各症例からtotal RNAを抽出した後に行うRNA-seq解析は外部委託解析予定としているため、予定症例数が集積された後に行うこととしていた。そのため、各疾患群ともに集積が3例に至っていない現時点で、RNA-seq解析は施行されていない。しかしながら、研究計画を変更して、当初は外科切除検体採取によるRNA-seq解析後に開始する予定だった間質性肺炎合併非小細胞肺癌、間質性肺炎非合併非小細胞肺癌、肺癌非合併間質性肺炎の各疾患群に対するエクソソーム解析を令和2年度から前倒しで開始し、RNA-seq解析と同時並行で行うこととした。以上から、令和2年度中より、前述の3疾患群に該当する症例に対して各疾患群20例を目標に対象を選定し、書面による同意取得後、診療における血液検査時に10mLの血液を追加で採取して、血液からエクソソームを分離、抽出する研究に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は令和2年度と比較して、全体に受診患者数の増加が見込まれる。さらに症例の集積を加速させるため、埼玉医科大学総合医療センターにても本研究を開始することとし、すでに倫理委員会申請を行い、承認予定となっている。これらから、本年度前半にRNA-seq解析を完了できると考えられ、令和2年度にてやや遅れていたlncRNA発現プロファイルの検出、間質性肺炎合併非小細胞肺癌の肺癌と間質性肺炎組織に特有のlncRNA発現の同定が可能になると推測される。なお、RNA-seq解析後のlncRNA発現プロファイル検出および目的とするlncRNA発現の同定に関しては、予定していたソフトウェア以外の新たなソフトウェアも採用することとし、さらに国立遺伝学研究所等他施設からの研究協力も予定されるため、速やかに結果を取得することが可能と考えられる。 一方、令和2年度中にエクソソーム解析の準備を行い、すでに症例の集積を開始している。そのため、令和3年度では当初の計画に加え、RNA-seq解析により目的とするlncRNA発現を同定するとともに、lncRNAを対象としたエクソソーム解析を迅速に進めることが可能となっている。エクソソーム解析に関しては、血液検査時に追加で採取した血液からエクソソーム解析キットによりエクソソームを分離、抽出する予定であり、間質性肺炎合併非小細胞肺癌、間質性肺炎非合併非小細胞肺癌、肺癌非合併間質性肺炎の3疾患群各20例の集積を目標として、すでに着手している。また、エクソソーム解析に関しても倫理委員会承認後、埼玉医科大学総合医療センターにて新たに行う予定となっており、症例集積の加速が期待される。 以上から、研究参加施設追加、RNA-seq解析後のlncRNA発現同定過程の強化、エクソソーム解析への着手等により、本研究は進捗に支障をきたすことなく遂行することが可能になると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に、間質性肺炎合併非小細胞肺癌と間質性肺炎非合併非小細胞肺癌の外科切除検体から肺癌組織、間質性肺炎組織、肺癌周囲正常肺組織を採取してtotal RNA抽出後、外部委託によるRNA-seq解析を予定していたが、新型コロナウイルス感染症流行による症例集積不足からRNAseq解析の施行に至らず、次年度使用額が生じた。しかしながら、令和3年度においては、受診患者数増加が見込まれるとともに埼玉医科大学総合医療センターの研究参加施設追加があることから、速やかに症例が集積され、RNA-seq解析の遂行が可能になると予想される。そのため、RNA-seq解析に用いる目的だった次年度使用額は、令和3年度前半に使用を完了すると推測される。一方、令和4年度で開始する予定だったエクソソーム解析を令和2年度に前倒しして開始したため、令和4年度に予算を計上して購入する予定だったエクソソーム解析用試薬、キット類を、令和2年度中に購入することとなった。これにより、今後に予定されていたエクソソーム解析への支出が大幅に減少することとなった。そのため、次年度使用額に加え、令和2年度にて執行したエクソソーム解析用試薬、キット類に関する予算をRNA-seq解析の遂行に充当することが可能となり、予定外の支出をきたすことなく、目的とするRNA-seq解析を遂行することができると考えられる。
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