研究課題/領域番号 |
20K08529
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
魚津 桜子 藤田医科大学, 医学部, 講師 (10293713)
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研究分担者 |
塚本 徹哉 藤田医科大学, 医学部, 教授 (00236861)
近藤 征史 藤田医科大学, 医学部, 教授 (00378077)
今泉 和良 藤田医科大学, 医学部, 教授 (50362257)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 嚢胞発生癌 / 肺嚢胞 / 肺癌 / 肺気腫 / 慢性炎症 / DNAシークエンス法 |
研究実績の概要 |
肺嚢胞から発生する肺癌の発生メカニズムを明らかにするために、まず癌の発生母地となる嚢胞がいかなる組織学的特徴をもつかを整理し、嚢胞において発癌の誘因となりうる生体反応メカニズムの組織レベルの現象をとらえることを目標とした。 嚢胞発生肺癌が好発する主要な肺疾患のひとつが肺気腫である。肺気腫における粗大な嚢胞病変に発生する肺癌の画像学的・病理学的特性についてはいまだ不明の点が多い。そこで、肺気腫に合併する嚢胞発生肺癌における画像学的特性、および背景となる肺気腫のリスク因子を明らかにすることを試みた。 当施設で肺気腫を背景にもち嚢胞性病変に合併する肺癌を診断した症例28例を対象に、CT画像における肺気腫、および肺癌を伴う嚢胞性病変の形態的特徴を解析した。対象症例は28例。全例喫煙者で男性27例。扁平上皮癌18例、腺癌9例、小細胞癌1例。背景の肺気腫は小葉中心性16例、汎小葉性8例、傍隔壁型4例。Goddard分類1点12例、2点9例、3点7例、4点0例。肺癌の発生した嚢胞性病変は、胸膜直下の大型嚢胞が10例、複数嚢胞の癒合発達した病変が13例、限局性に発達した嚢胞が2例、その他3例であった。 これらの結果から、本解析においては、嚢胞発生肺癌は、背景となる肺気腫の進行度に関わらず観察され、肺気腫の組織病理を反映するとされるCT画像形態分類によっても一定の傾向を示さなかった。 また、嚢胞合併肺癌の大部分は、肺気腫の進行度に関わらず、最も嚢胞化の進行した、あるいは限局性に嚢胞化が高度進行した部位に生じ、嚢胞化の進行そのものが肺癌発生のリスク因子となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
嚢胞発生肺癌を伴う多数の症例を集積したところ、嚢胞の形態的特徴や発生癌の組織学的特徴が予想以上に多様であることが判明した。嚢胞発生癌の組織学的特性を明らかにすること、とくに嚢胞と癌との間にみられる組織学的関係を詳細に解析することは、嚢胞発生肺癌の発生メカニズムを解明するための根幹となる所見になり得る。したがって、嚢胞発生癌および発生母地の嚢胞に関する画像学的・組織学的特性の解析に、当初の計画より多くの期間を要した。その結果、今後の研究における重要な手法となる、嚢胞・癌からの組織の分画採取にあたり、個々の症例における解析方法を具体化することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究によって、肺気腫を背景とし限局的に発達した嚢胞発生癌の個別症例に対し、嚢胞発生癌の画像上の特性および組織検体における形態的特徴を明らかにした。そこで、次年度では、これら症例を対象に、外科摘除した嚢胞発生肺癌の固定組織切片からマイクロダイセクションを行い、嚢胞における非腫瘍部分、および癌組織をそれぞれ選択的に採取する。次いで、選択採取した嚢胞部分および癌組織から各々DNAを抽出し、全DNAシークエンスを行う(1)。得られたシークエンスデータの比較によって、嚢胞上皮の癌化に関与する遺伝子変異を検出する。また、一般に、慢性炎症/線維化の組織からの癌の発生には、細胞増殖の亢進によるゲノム変異の誘発、炎症性代謝物質による細胞傷害、慢性の免疫活性化によるサイトカイン環境の変化、アポトーシスの抑制、が関与すると考えられている。そこで、(1)と並行して、上述のごとく選択的に採取した嚢胞組織の検体に対し全RNAシークエンス解析を行い、これら腫瘍誘発機序に関与する分子の発現を網羅的に解析する(2)。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度において嚢胞発生肺癌を伴う多数の症例を集積したところ、嚢胞の形態的特徴や発生癌の組織学的特徴が予想以上に多様であることが判明したため、嚢胞発生癌および発生母地の嚢胞に関する画像学的・組織学的特性の解析に、当初の計画より多くの期間を要した。そのため、申請当初の研究計画において本年度に遂行する予定であった遺伝子解析にかかる支出を次年度に持ち越したため、次年度使用額が生じることとなった。
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