研究課題
eR1はRunx1の発現を制御しているエンハンサーであり、様々な組織幹細胞で活性化していることが明らかとなっている。本研究では、肺におけるeR1の活性化と肺組織幹細胞との関連について、遺伝子改変マウス、培養細胞などを用いて解析することを目的としている。昨年度までの培養細胞を用いた実験において、eR1陽性細胞はCD44、Oct4、SOX2の発現が上昇しているが、足場非依存的な増殖が亢進しているわけではないことを見出し、一般的な癌幹細胞が有するような特性(腫瘍形成能)を必ずしも有しているわけではないことが明らかとなった。そのため、本年度はeR1の活性化を測定できるeR1-Tgマウスを用いてナフタレン傷害モデルにおける解析を再度詳細に行った。ナフタレンを腹腔内投与し、肺におけるeR1陽性細胞を詳細に解析した結果、ナフタレン傷害後の肺組織においてeR1陽性細胞は気道上皮に集積して増殖していることが明らかになった。一方で、コントロールではeR1陽性細胞は気道上皮の底部に存在するわずかな細胞においてのみしか発現がみられず、無刺激状態の気道上皮細胞ではeR1は活性化していないことが明らかとなった。無刺激状態におけるeR1陽性細胞は解剖学的位置よりbasal stem cellであると考えられる。そこでbasal stem cellのマーカーであるp63の染色を試みたが、最適な抗体を見出すことが出来ず現在進行中である。また、今回はマウスを用いた解析であったため、肺以外のeR1陽性細胞についても同時に解析を行った。これまで胃がん幹細胞としてMist1陽性細胞が同定されているが、胃の傷害時に増殖するeR1陽性細胞はMist1陽性であることが明らかとなった。胃におけるeR1陽性細胞の意義に関しても肺と同様、今後検討する必要があると思われる。
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