研究課題/領域番号 |
20K08532
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研究機関 | 公益財団法人結核予防会 結核研究所 |
研究代表者 |
慶長 直人 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 副所長, 副所長 (80332386)
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研究分担者 |
土方 美奈子 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 生体防御部, 部長 (90332387)
森本 耕三 公益財団法人結核予防会 結核研究所, 抗酸菌部 細菌科, 研究員 (40511879)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 原発性線毛機能不全症候群 / 鼻腔NO測定 / 遺伝子検査 / 電子顕微鏡検査 / 副鼻腔気管支症候群 / 不妊 |
研究実績の概要 |
原発性線毛不全症(primary ciliary dyskinesia; PCD)は、線毛の構造/機能遺伝子の異常に起因する先天性疾患であるが、しばしば成人期に診断される。原因として線毛の構造や機能に関わる50以上の遺伝子異常が知られており、診断確定が困難である。臨床的に何をマーカーとしてPCDを鑑別すべきか、また、どうしてこの型のPCDが緩徐に進行し、成人期に診断されているのか、またマクロライド抗菌薬に反応しない症例が多いとすれば、何を指標に治療を進められるのか。これらの疑問に対して、本研究では、欧米における嚢胞性線維症(cystic fibrosis, CF)の病態解析との関連で注目される喀痰中の微生物ゲノム解析の検索範囲を真菌にまで広げて、わが国のPCDの病態と微生物叢との関連を検討することを目的としている。PCD症例の集積と遺伝子診断を含めた検査一式は、現在進行中の別のプロジェクトと共同で実施しており、これまでにPCDに合致する遺伝子異常が26例で同定され、そのうち13例で日本人で最も高頻度に見られるDRC1遺伝子の大規模欠失症を認めている。PCD患者の喀痰中のメタ16S解析を行い、さらに電子顕微鏡(EM)上、典型的な異常を示すPCD患者、びまん性汎細気管支炎、その他の気管支拡張症患者由来の喀痰材料、臨床疫学情報、各種検査情報との相関を合わせて、嫌気性菌、抗酸菌、真菌ゲノムを含む下気道由来の微生物叢の多様性、分布の特徴を明らかにするための検討を実施し、DNA抽出方法・PCR増幅・次世代シークエンサーによる配列取得の最適化、Qiime2解析ツールによる細菌叢の分布の可視化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに40例から喀痰提供を受け、遺伝子解析でPCD原因遺伝子変異が既に確定されている症例19例を含み、日本人で最も高頻度に見られるDRC1遺伝子の大規模欠失症例10例と欧米のPCD原因遺伝子として最も高頻度のDNAH5変異症例4例、CCDC39変異症例2例などであった。対象となる症例の喀痰は、採取後直ちに分注、-80度で保存した。特に非結核性抗酸菌のように一般細菌よりDNA抽出が難しい菌種の検出が十分に行われているかどうか検証を行うために、DNA抽出時のビーズ破砕時間の延長による細菌叢の違いの有無を詳細に検討し、非結核性抗酸菌由来配列の検出が可能である条件を決定した。イルミナ社短鎖シークエンサーを用いた16S rRNA V3-V4領域の解析とQiime2解析ツールを用いた細菌叢の分布の可視化を行ったことに加え、ナノポア社ロングリードシークエンサーを用いた16S rRNA全長配列の解析を、Flongleフローセルにより実施した。真菌叢に特化した検出を試みるために、真菌ゲノムDNAのnuclear ribosomal internal transcribed spacer(ITS)領域のPCR増幅を様々なプライマーペアで試みて、サンガーシークエンス法で増幅産物の配列確認を行った。宿主ゲノムDNAを多く含む喀痰材料を材料とするため、プライマーペアによってはヒト由来配列の増幅がみられた。真菌ゲノムに特異性の高いプライマーペアを選択した上で、増幅産物をイルミナMiSeqによりシークエンスしたところ、アスペルギルスの検出が確認された。
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今後の研究の推進方策 |
DNA抽出方法、次世代シークエンサーを用いた配列解析については、細菌、真菌ともに最適化を行い、Qiime2解析ツールを用いた細菌叢の分布の可視化も確立した。今後は、真菌叢解析ツールに用いるデータベースの検討をさらにすすめ、真菌の同定能の検証と最適化を行う。症例数を増やして、各群に特徴的な微生物細菌叢の特徴を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響により、出張旅費をオンラインとして、その分を次年度に、全検体の同一条件でのデータ確定のための解析用の試薬購入に使用する予定である。
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