LGR6高発現かつCTNNB1変異陽性非小細胞肺癌(NSCLC)細胞株HCC15とA427において、RNA干渉によるLGR6ノックダウンにより共通して発現変動する遺伝子群をmRNAシークエンスにより解析した。その結果、LGR6ノックダウンにより発現低下する遺伝子群、すなわちLGR6により正に制御されると推定される遺伝子群のうち特に関連の強かった遺伝子としてGNB4、SUZ12、PRKAA2を同定した。一方で、LGR6ノックダウンにより発現上昇する遺伝子群、すなわちLGR6により負に制御されると推定される遺伝子群のうち特に関連の強かった遺伝子としてTGFBR1、HDAC3を同定した。これらのLGR6関連遺伝子群のHCC15及びA427細胞における発現変動はリアルタイム定量RT-PCRにより検証された。さらに、SUZ12及びPRKAA2はLGR6高発現かつAPC変異陽性NSCLC細胞株HCC2935において過剰発現していることを見出した。 HCC15細胞において同定されたLGR6関連遺伝子群の中に血管内皮増殖因子A(VEGFA)が含まれており、LGR6ノックダウンによるVEGFAの発現低下はリアルタイム定量RT-PCRにより検証された。39のNSCLC細胞株を用いたリアルタイム定量RT-PCRによる発現解析の結果、VEGFA発現はIL-8発現と有意に相関することが明らかとなり、特にHCC2935細胞においてVEGFAとIL-8は共に過剰発現が認められた。VEGFAやIL-8は腫瘍血管新生において重要な役割を果たすことが知られているが、CTNNB1変異陽性NSCLCのみならず、APC変異陽性NSCLCにおいてもLGR6がVEGFAやIL-8の発現制御に関与することでNSCLCの悪性形質獲得に関与している可能性が示唆された。
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