研究課題/領域番号 |
20K08534
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
田邉 信宏 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任教授 (40292700)
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研究分担者 |
國澤 純 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 ワクチン・アジュバント研究センター, センター長 (80376615)
坂尾 誠一郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (80431740)
重城 喬行 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (90736422)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腸内細菌叢 / 肺高血圧症 / 慢性血栓性肺高血圧症 / 炎症 / サイトカイン |
研究実績の概要 |
2022年度は、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者を対象とした腸内細菌叢解析を行った。CTEPH患者と健常人の腸内細菌叢比較を行った所、CTEPH患者群では健常人と異なる腸内細菌叢組成を取ることが明らかとなった。さらに、CTEPH患者群では腸管保護作用のある酪酸産生菌が減少していることが明らかとなり、患者群における腸内細菌由来のエンドトキシン高値との関連が示唆された。さらにこのエンドトキシンはTNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインと正の相関を示した。このことから、腸内細菌叢異常を引き金とし、エンドトキシンを介した炎症性機序の亢進がCTEPHの病態と関連していることが示唆された。 研究機関全体として、肺高血圧症動物モデルおよび肺高血圧症患者の両方で腸内細菌叢異常が存在することを示した。このことは、腸内細菌異常が種や疾患グループを越えて病態発生に関与している可能性が示唆するものである。さらに、腸内細菌叢異常を持つ肺高血圧症動物モデルに対して、抗菌薬により細菌叢を修飾した検討では、抗菌薬投与が肺高血圧症の病態進展を抑制することを示した。腸内細菌叢異常が肺高血圧症の病態発生の原因の一つとして振る舞う可能性を示唆している。研究の成果は腸内細菌叢異常が肺高血圧症の予防・治療の新たなターゲットになり得ることを示している。 今後の研究の方向性としては、肺高血圧症で認められる腸内細菌叢異常を是正する方法の探索が一つに挙げられる。具体的には、腸内細菌叢を改善させるプロバイオティクス、腸内細菌由来の有益な代謝物を補充するポストバイオティクスなどが候補となりうる。本研究の社会的意義は、こうした肺高血圧症の病態進展を抑制する予防・治療法開発のビジョン高値肉体して、パラダイムシフトを起こし、全く新しい視点を提供したことにあると考えられる。
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