慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病態には慢性的な好中球性気道炎症が関与している。近年、好中球が細胞外に網目状の構造物であるNeutrophil extracellular traps(NETs)を放出し、組織障害を誘導することが多くの炎症性疾患で指摘されている。COPD患者気道中には安定期・増悪期ともにNETsを認め呼吸機能と負の相関が報告されているがその役割は不明である。本研究ではNETs発現に中心的な役割を持つpad4遺伝子欠損マウスを用い、肺気腫形成におけるNETsの役割を詳細に解析することを目的とした.まず、野生型(Wt)マウスにエラスターゼ投与を行い、気管支肺胞洗浄液中の細胞分画と好中球NETsの存在について、解析を行っ た。肺組織中のNETsの存在をNET構成成分(MPO、NE、citH3、細胞外核等)の免疫染色免疫染色にて、評価し、好中球がNETsに特徴的なシトルリン化ヒストン(citH3)陽性の核を細胞外に放出する像をエラスターゼ投与群で有意に認めた。経時的解析では、エラスターゼ投与2日後の急性期に著明に認められ、その後、NETs陽性細胞の減少を認めた。以上より、気腫形成の急性期にNETsが何らかの役割を持つことが示唆される結果を得た。NETsの発現には、PAD4酵素によるヒストン3のシトルリン化(cit H3)とそれに続くクロマチンの脱重合が重要である。現在、NETsの気腫における役割をpad4遺伝子欠損マウス(pad4 KOマウス)に対して、エラスターゼ投与を行い、NETs抑制効果や、気腫形成への影響炎症や気腫形成に変化がある可能性を認めている。炎症改善効果や分子機序について解析を追加している。
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