研究課題
肺線維化とヒトγδ型T細胞の相関を明らかにするために、まずは細胞モデルを用いて検証を行った。ヒトγδ型T細胞は末梢血単核球分画からIL-2と独自に開発した新規抗原であるPTA(tetrakis‐pivaloyloxymethyl 2‐(thiazole‐2‐ylamino) ethylidene‐1,1‐bisphosphonate)を用いて増殖誘導を行い、高純度かつ大量のγδ型T細胞を得ることが可能であった。細胞モデルとしてヒト肺線維芽細胞とヒトγδ型T細胞を共培養させたところ、肺線維芽細胞の1型コラーゲンの減少、COL1A1-mRNA、COL1A2-mRNAの発現の低下を認めた。またCulture Insertを用いて細胞間の直接接触を阻害すると、このコラーゲンの抑制作用は消失した。これらの結果からヒトγδ型T細胞の肺線維芽細胞に対するコラーゲン抑制作用は直接接触が必要であることが示唆された。またγδ型T細胞の活性剤であるHMBPP((E)-4-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブテニル二リン酸)をヒトγδ型T細胞に作用させたところ、 コラーゲン減少を誘導するγδ型T細胞の必要数は大幅に減少し、またCulture Insertを用いた場合でもコラーゲンの抑制作用を認めた。HMBPPで刺激したヒトγδ型T細胞はIFNγやTNFαなどのサイトカインを放出するため、コラーゲン抑制作用の機序として液性因子の関与も示唆された。また本研究では線維化性間質性肺炎患者の血液、気管支肺胞洗浄液中のγδ型T細胞の免疫学的解析も実施しており、症例集積中である。
2: おおむね順調に進展している
細胞を用いた検討では、肺線維芽細胞における抗線維化作用を証明できており、ヒト検体を用いた検討では、肺胞洗浄液でのγδT細胞比率の比較が可能となってきているため。
今後は、肺線維症患者からのγδT細胞の効果、肺線維症動物モデルを用いた検討を予定している。またヒト肺胞洗浄液を用いた検討では、各種疾患と臨床所見との関連を予定している。
学会の中止やオンライン開催に伴い旅費が発生しなかったため次年度使用額が発生した。また、実験に必要な消耗品が安価で購入できたことで、こちらでも次年度使用額が発生した。次年度については、肺線維症患者のγδT細胞を用いたin vitroでの効果を実証するためのwestern blot用の試薬や、肺線維症マウスモデルでの効果を確かめるためのマウス購入や染色試薬などの購入に充てる予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件)
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