研究課題/領域番号 |
20K08546
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
党 雅子 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (90595597)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 気管支喘息 / 肥満 / ステロイド抵抗性 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
気管支喘息治療は、吸入ステロイドの導入により著明な進歩をとげたが、今なおステロイド抵抗性の重症喘息患者が5~10%存在する。ステロイド抵抗性重症喘息の治療の開発は、重要な課題である。肥満を有する重症喘息患者はステロイド治療抵抗性を有しているが、その機序は解明されていない。我々はこれまでに、肥満を有する喘息患者では、非肥満患者と比較して急性増悪の回数が多いこと、急性増悪の回数は血中の酸化ストレスマーカーレベルと相関していることを示した。さらには、肥満を有する喘息患者の末梢血単核球(PBMC)では、ステロイド感受性が低下していることをex vivoの系で確認した。 この結果を踏まえ、肥満を有する気管支喘息患者におけるステロイド抵抗性の機序の解明を行っている。肥満患者の血清中で上昇している蛋白質であり、かつ酸化ストレスと関連のある蛋白質の中から、この機序に強く関連していると考えられる蛋白質の候補をみいだした。この蛋白質と、ステロイド抵抗性および気管支喘息の重症度との関連を、臨床データおよび臨床検体を使って解析を行っている。 2020年度は、重症喘息患者をリクルートし、採血および臨床データの収集を行った。同時にPBMCを用いたex vivo の系でステロイドの感受性の測定を行った。さらに患者PBMCのwhole cell extractと総RNA、および血清を得て、後の解析のために-80℃で冷凍保存している。2020年度終了時の段階で、予定数の患者検体と臨床データの収集を完了することができ、次年度に予定していた解析にむけての準備が整っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度中に、予定数の患者検体と臨床データの収集を完了することができ、次年度に予定していた解析にむけての準備が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度中に、必要な数の臨床データおよび臨床検体の収集を完了することができた。今後は、臨床検体の詳細な測定と解析を行っていく。 まず、ターゲット蛋白質の血清中濃度、およびPBMC中の発現量の定量を行う。加えて、血清中のアディポサイトカイン、酸化ストレスマーカーおよび関連マーカーの測定を行う。これらの結果と、前年度に行ったステロイド感受性定量結果、および臨床データの関連について統計解析を行う。ある程度の所見が得られた後に、培養細胞株を使ってその所見の確認を開始する予定である。これによって肥満とステロイド感受性低下をつなぐ経路を探索していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額ながら次年度使用額が生じた理由としては、2020年度の研究をより効率的に実施したことに伴い発生した未使用額である。2020度の未使用額は2021年度請求額と合わせ、2021年度の研究遂行のために使用する。具体的には、血清中のアディポサイトカインの測定項目を1項目増やす予定であり、2020度の未使用額はこの測定キットの購入にあてる。この変更により、肥満とステロイド感受性低下をつなぐ経路の探索を、より詳細に行うことができるようになる。
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