気管支喘息治療は、吸入ステロイドの導入により著明な進歩をとげたが、現在でもステロイド抵抗性の重症喘息患者が5~10%存在する。このような患者のための治療の開発は、重要な課題である。肥満合併重症喘息患者は、ステロイド治療抵抗性を有しているが、その機序は解明されていない。我々は、肥満合併気管支喘息患者におけるステロイド抵抗性の機序の解明を行っている。 重症喘息患者をリクルートし、採血および臨床データの収集を行った。同時に末梢血単核細胞(PBMC)を用いたex vivo の系でステロイド感受性の測定を行った。さらに患者PBMCのwhole cell extractと総RNA、および血清を得て、後の解析のために-80℃で冷凍保存した。次に、収集した臨床検体の解析を行った。その結果、PBMCのステロイド感受性は、肥満群で有意に低下していた。このステロイド感受性は、過去1年間の喘息増悪回数と有意な相関がみられた。ステロイド感受性との関連因子を検索し、肥満群では末梢血の酸化ストレスマーカーの値とステロイド感受性とが有意に相関していることを発見した。これに対して、血清アディポサイトカインは、肥満患者で上昇が見られるものの、ステロイド感受性を規定する因子ではなかった。AMP-activated protein kinase (AMPK)活性についても肥満者で低下が報告されているものの、ステロイド感受性低下との関連を見いだせなかった。 次のステップとして、PBMCを各種化合物の存在下で培養し、ステロイドの感受性を回復させる可能性のある化合物の検索を行なった。その結果、メトフォルミンが肥満患者でのみ、ステロイドの感受性を低下させることを確認した。しかし、メトフォルミンの効果とAMPK活性の動きとの関連は見いだせなかった。現在、この機序について、臨床データ、細胞株を使って検討を行っている。
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