研究課題/領域番号 |
20K08547
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
石井 晴之 杏林大学, 医学部, 教授 (30406970)
|
研究分担者 |
田澤 立之 東京医科歯科大学, 学生支援・保健管理機構, 教授 (70301041)
竹内 志穂 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任准教授 (70422277) [辞退]
中田 光 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任教授 (80207802)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 肺胞蛋白症 / 骨髄異形成症候群 / ドライバー遺伝子 |
研究実績の概要 |
初年度においては、1番染色体転座と,8番染色体トリソミーに骨髄染色体異常が集中していることを見いだし、これらの染色体にはMYCやTETなどの癌化に重要な遺伝子があり、発症との関連が示唆される。MDS-SPAP症例のExome Sequenceの解析を開始した。2020年度においては、新たに解析できた症例は1例のみでNKcellのCSF3R, 白血病化に関連しているTET2: frameshiftdeletionやASXL1: frameshift insertion、転写にかかわる調整因子(クロマチン合成蛋白)のBCOR: stopgain, frameshift insertionが検出された。これまで行ってきたTarget Sequence解析を行った2例においては、14番アレル不均衡、20番長腕部分欠失、1番染色体異常mなどが検出されており、ミスリード0.05から有意な部位と考えていた。 しかし2年次においてもコロナ禍の影響で、この非常に稀少な肺疾患の臨床検体を集めることは予想外に厳しい状況となった。しかし、我々の診療研究ネットワークにより全国で新規症例の検体収集することができ情報追加できた。新たな2例の末梢血単核球からDNA抽出を行い、現在エクソーム解析を施行中であり候補遺伝子リストアップが終了予定である。また対象疾患の臨床情報も新たに追加され、肺胞蛋白症を合併するMDSの核型異常として8番染色体のトリソミーがリスク因子として強調される結果となった。またMDS診断時のIPSSにおける重症化リスクより、肺胞蛋白症合併後の呼吸不全の悪化や感染症合併が新たなMDS予後不良因子として確認できる情報が増えた。 現時点では候補遺伝子のリストアップとしてエクソーム解析を行っているが、MDSがん遺伝子ターゲットシークエンスとSNPアレイも確認のために同時並行で行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍により本対象疾患となる稀少肺疾患の新規診断例が初年度は著しく減少した。そのため我々の診療研究ネットワークに入る情報も乏しく、臨床検体が予定通りに収集できなかったことが大きい。これらの傾向は少しずつ改善しているような状況と思われるが、造血幹細胞移植の予定に入るような症例は現時点では登録できていない。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の対象疾患が稀少肺疾患であるため、臨床検体の収集が問題になることは理解していたがコロナ禍での影響は想定外であった。しかし、この半年間で診療研究ネットワークでの情報収集が回復してきており、できる限り研究活動の啓蒙は進めていく。 また新たに情報収集した検体は現在解析中であるが、予後を含めた臨床情報はかなり特徴的所見がまとまりつつあるので、遺伝子解析にも共通した結果が得られる可能性が高い。 現在の解析結果で重要な情報が得られると思われるが、その裏付けとなる造血幹細胞移植前後の検体収集は未定のままで、現時点では研究期間中に解析できない可能性はある。できる限り、研究活動のための情報収集や広報活動は進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により調査および検体収集のための外出制限があり、予定通りの検体処理が行えなかった。これまで検体処理に関しては研究協力施設に出向き、その施設内で採血後の検体処理を自分自身で行ってきた。それらの対応に必要な物品も予定の検体数が集められずに購入も進められていなかった。出張のための旅費も同様の理由で使用できなかった。
|