気管支喘息に対する生物学的製剤がもたらす免疫調節作用の解明

2020 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 20K08549
• 研究機関: 順天堂大学
• 研究代表者: 原田 紀宏 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10465065)
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2023-03-31
• キーワード: 気管支喘息 / 生物学的製剤 / 免疫

研究実績の概要

吸入ステロイド薬により、喘息の症状管理は格段に改善しているが、喘息が完治することはない。また、10％ほどの難治性喘息患者は、ステロイド抵抗性であるため、吸入ステロイド薬の効果は限定的である。現在、既存治療で管理が不十分な重症喘息に対して、抗IgE抗体製剤オマリズマブ、抗IL-5抗体製剤メポリズマブ、抗IL-5受容体α抗体製剤ベンラリズマブ、抗IL-4受容体α抗体製剤デュピルマブの４つの生物学的製剤が本邦で使用可能である。既に10年以上の使用歴のある抗IgE抗体製剤では、高親和性IgE受容体の発現低下や末梢血リンパ球分画がTh2優位にシフトする可能性が報告されている。このように特定の分子を抑制する生物学的製剤が生体に及ぼす免疫調節作用については明らかではない。本研究においては、生物学的製剤治療の免疫調節作用を明らかにし、喘息病態の解明、各生物学的製剤に対する新規バイオマーカーや喘息に対する新規治療標的分子の開発を目指している。現時点で、既存の治療で管理不十分な喘息患者に対して生物学的製剤が使用された喘息患者100例弱が登録されている。2020年度は、メポリズマブ、および、ベンラリズマブの治療1年間の解析を実施した。メポリズマブで1年間治療した症例では、末梢血好酸球、好塩基球、血清総IgE値、CD69陽性type 1 innate lymphoid cellsおよびnatural killer細胞は有意な減少を認め、血清エオタキシンは有意な上昇を認めた。また、ベンラリズマブで1年間治療した症例では、末梢血好酸球、好塩基球、Th2細胞、制御性T細胞は有意な減少を認め、血清エオタキシンは有意な上昇を認めた。さらに、両剤治療の1年後の有効例を予測するバイオマーカーを解析している。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2020年度は、二つの生物学的製剤の末梢血単核球のフローサイトメトリーや血清タンパクの解析を行っているが、現在、さらなる解析と並行して、皮脂RNA解析を行っている。また、シングルセルRNAシークエンス解析の準備も行っているがやや遅れている。

今後の研究の推進方策

2021年度は、更なる症例、検体の集積、皮脂RNA解析、シングルセルRNAシークエンス解析を行い、治療による変化を評価する。また、治療前のデータと治療効果を解析し、喘息病態の解明と治療効果を予測する新規バイオマーカーの確立を目指す。

研究成果

• [雑誌論文] A case of hand urticaria, lip angioedema, and oropharyngeal pruritus induced by Japanese radish through IgE-mediated immediate allergic reaction (2021)
  • 著者名/発表者名: Abe Sumiko、Ito Jun、Harada Sonoko、Sasano Hitoshi、Ueda Shoko、Sandhu Yuuki、Takeshige Tomohito、Katsura Yoko、Harada Norihiro、Takahashi Kazuhisa
  • 雑誌名: Allergy, Asthma & Clinical Immunology 巻: 17 ページ: 36
  • DOI: 10.1186/s13223-021-00538-1
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Anaphylaxis to three humanized antibodies for severe asthma: a case study (2020)
  • 著者名/発表者名: Jingo Koichi、Harada Norihiro、Nishioki Toshihiko、Torasawa Masahiro、Yamada Tomoko、Asao Tetsuhiko、Takagi Haruhi、Takeshige Tomohito、Ito Jun、Takahashi Kazuhisa
  • 雑誌名: Allergy, Asthma & Clinical Immunology 巻: 16 ページ: 46～46
  • DOI: 10.1186/s13223-020-00446-w
  • 査読あり
• [雑誌論文] Mobile Health App for Japanese Adult Patients With Asthma: Clinical Observational Study (2020)
  • 著者名/発表者名: Harada Norihiro、Harada Sonoko、Ito Jun、Atsuta Ryo、Hori Satoshi、Takahashi Kazuhisa
  • 雑誌名: Journal of Medical Internet Research 巻: 22 ページ: e19006～e19006
  • DOI: 10.2196/19006
  • 査読あり
• [雑誌論文] Pulmonary infection due to fluoroquinolone-resistant Mycolicibacterium fortuitum: a case report (2020)
  • 著者名/発表者名: Kurokawa Kana、Harada Norihiro、Sasano Hitoshi、Takagi Haruhi、Takei Satomi、Nakamura Ayako、Kamada Keisuke、Yoshida Atsushi、Kikuchi Ken、Takahashi Kazuhisa
  • 雑誌名: BMC Infectious Diseases 巻: 20 ページ: 866～866
  • DOI: 10.1186/s12879-020-05596-1
  • 査読あり
• [学会発表] Clinical and immunological effect of mepolizumab treatment in patients with severe asthma (2020)
  • 著者名/発表者名: Hitoshi Sasano, Norihiro Harada , Yuuki Sandhu, Yuki Tanabe, Sonoko Harada, Takayasu Watanabe, Yoshihiko Sato, Takayasu Nishimaki, Yukari Oyama, Sumiko Abe, Shoko Ueda, Tomohito Takeshige, Kei Matsuno, Jun Ito, Kazuhisa Takahashi
  • 学会等名: American Thoracic Society International Conference 2021. Virtual Conference,
  • 国際学会
• [学会発表] 重症気管支喘息患者に対するデュピルマブの効果に関する検討 (2020)
  • 著者名/発表者名: 安部寿美子、原田紀宏、三道ユウキ、笹野仁史、田辺悠記、原田園子、渡邉敬康、佐藤良彦、西牧孝泰、大山由香里、上田翔子、竹重智仁、伊藤潤、熱田了、高橋和久
  • 学会等名: 第60回日本呼吸器学会学術講演会
• [学会発表] 重症気管支喘息に対するベンラリズマブ投与1年の検討 (2020)
  • 著者名/発表者名: 三道ユウキ、原田紀宏、笹野仁史、田辺悠記、原田園子、渡邉敬康、佐藤良彦、西牧孝泰、大山由香里、安部寿美子、上田翔子、竹重智仁、長岡鉄太郎、伊藤潤、熱田了、高橋和久
  • 学会等名: 第60回日本呼吸器学会学術講演会
• [学会発表] 重症気管支喘息患者に対するメポリズマブの効果に関する検討 (2020)
  • 著者名/発表者名: 笹野仁史、原田紀宏、三道ユウキ、田辺悠記、原田園子、渡邉敬康、佐藤良彦、西牧孝泰、大山由香里、安部寿美子、上田翔子、竹重智仁、松野圭、長岡鉄太郎、伊藤潤、熱田了、高橋和久
  • 学会等名: 第60回日本呼吸器学会学術講演会
• [学会発表] 当院における重症喘息に対するベンラリズマブ投与1年の検討 (2020)
  • 著者名/発表者名: 三道ユウキ、原田紀宏、笹野仁史、田辺悠記、原田園子、安部寿美子、上田翔子、竹重智仁、伊藤潤、高橋和久
  • 学会等名: 第4回日本アレルギー学会関東地方会
• [学会発表] 当院における重症喘息に対するメポリズマブ投与1年の検討 (2020)
  • 著者名/発表者名: 笹野仁史、原田紀宏、三道ユウキ、田辺悠記、原田園子、佐藤良彦、渡邉敬康、西牧孝泰、大山由香里、安部寿美子、上田翔子、竹重智仁、松野圭、伊藤潤、熱田了、高橋和久
  • 学会等名: 第51回日本職業・環境アレルギー学会総会・学術大会
• [学会発表] 重症気管支喘息患者に対するデュピルマブの臨床効果 (2020)
  • 著者名/発表者名: 三道ユウキ、原田紀宏、笹野仁史、田辺悠記、原田園子、渡邉敬康、佐藤良彦、西牧孝泰、大山由香里、安部寿美子、上田翔子、竹重智仁、伊藤潤、熱田了、高橋和久
  • 学会等名: アレルギー・好酸球研究会2020
• [学会発表] 重症喘息に対するメポリズマブ投与1年の検討 (2020)
  • 著者名/発表者名: 笹野仁史、原田紀宏、三道ユウキ、田辺悠記、原田園子、渡邉敬康、西牧孝泰、大山由香里、安部寿美子、上田翔子、竹重智仁、松野圭、牧野文彦、伊藤潤、熱田了、高橋和久
  • 学会等名: 第60回日本呼吸器学会学術講演会
• [学会発表] 当院における重症喘息に対するベンラリズマブの使用経験 (2020)
  • 著者名/発表者名: 笹野仁史、原田紀宏、三道ユウキ、田辺悠記、原田園子、渡邉敬康、西牧孝泰、大山由香里、安部寿美子、上田翔子、竹重智仁、松野圭、牧野文彦、伊藤潤、熱田了、高橋和久
  • 学会等名: 第60回日本呼吸器学会学術講演会
• [学会発表] 気管支喘息患者における血中可溶性TIM－4濃度 (2020)
  • 著者名/発表者名: 田辺悠記、原田紀宏、原田園子、笹野仁史、三道ユウキ、松野圭、竹重智仁、牧野文彦、伊藤潤、熱田了、三宅幸子、高橋和久、秋葉久弥
  • 学会等名: 第60回日本呼吸器学会学術講演会
• [学会発表] 当院における気管支喘息に対するデュピルマブの使用経験 (2020)
  • 著者名/発表者名: 三道ユウキ、原田紀宏、笹野仁史、田辺悠記、原田園子、渡邉敬康、西牧孝泰、大山由香里、安部寿美子、上田翔子、竹重智仁、松野圭、牧野文彦、伊藤潤、熱田了、高橋和久
  • 学会等名: 第60回日本呼吸器学会学術講演会
• [学会発表] 重症気管支喘息患者に対するデュピルマブの臨床効果 (2020)
  • 著者名/発表者名: 三道ユウキ、原田紀宏、笹野仁史、田辺悠記、原田園子、佐藤良彦、渡邉敬康、西牧孝泰、大山由香里、安部寿美子、上田翔子、竹重智仁、伊藤潤、熱田了、高橋和久
  • 学会等名: 第1回日本喘息学会総会学術大会
• [学会発表] One Year Treatment With Benralizumab In Patients With Severe Asthma (2020)
  • 著者名/発表者名: Yuuki Sandhu, Norihiro Harada , Yuki Tanabe, Hitoshi Sasano, Sonoko Harada, Takayasu Watanabe, Takayasu Nishimaki, Yukari Oyama, Sumiko Abe, Shoko Ueda, Tomohito Takeshige, Kei Matsuno, Fumihiko Makino, Jun Ito, Ryo Atsuta, Kazuhisa Takahashi
  • 学会等名: American Thoracic Society International Conference 2020. Virtual Conference
  • 国際学会