本研究は、非小細胞肺癌における特異的なmicrobiomeの意義を日本人の肺癌検体で検証し、それらのmicrobiomeと肺癌の発癌や癌の進展における関連性を見出し、そのメカニズムを探索することで、新規診断および治療標的マーカーへの応用を目指している。 令和2年度から令和3年度の2年間は、上気道における特異的microbiomeとして過去に米国で報告されているAcidovorax属に着目した。当院における非小細胞肺癌手術検体50例の腫瘍組織および正常組織からDNAを抽出し、デジタルPCR法を用いてAcidovorax属を検出する特異的プライマーおよびプローブを作成し検証した。Acidovorax属は腫瘍組織に特に認められ、さらにCOPD合併非扁平上皮癌の腫瘍組織で有意であり(p<0.05)、またAcidovorax属陽性群は陰性群と比較して有意にTP53遺伝子変異が多いことを見出した(p<0.05)。COPD合併肺癌患者は喫煙の関与が大きいことが知られているが、Acidovorax属がCOPD合併肺癌の発癌や癌の進行に関与している可能性が示唆された。 令和3年度から令和4年度には、非小細胞肺癌手術検体50例の腫瘍組織および正常組織において、次世代シーケンサーによる16sリボソームRNA遺伝子解析を行い、候補遺伝子をバイオインフォマティクスによる絞り込みを行った。解析結果については、研究成果報告書にて詳細を報告する予定である。
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