研究課題/領域番号 |
20K08560
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松野 洋輔 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30633177)
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研究分担者 |
石井 幸雄 筑波大学, 医学医療系, 教授 (80272194)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 代謝リプログラミング / 肺線維症 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアゲノムの変異によりミトコンドリア呼吸鎖複合体の機能が低下したミトマウスでは、野生型マウスに比し、ブレオマイシン投与で誘導される肺の炎症には差を認めなかったものの、その後に生じる肺の線維化が増強していた。その機序を明らかにするため、マクロファージ 、肺胞上皮細胞、線維芽細胞に着目し、ミトコンドア機能の低下が、線維化進展に関わるこれらの細胞の分化異常に及ぼす影響をex vivoにて解析した。野生型マウスとミトマウスより骨髄由来マクロファージを単離し、IFN-γとLPSにてM1へ、またIL-4にてM2への分化を誘導したところ、TNF-α(M1)、またはTGF-β1やArginase(M2)の発現に違いは見られなかった。また両マウスより肺胞上皮細胞を単離してTGF-β1にて上皮間葉移行(EMT)を誘導したところ、上皮系遺伝子と間葉系遺伝子の発現には両群で差を認めなかった。一方、マウスの肺より線維芽細胞を分離し、TGF-β1により筋線維芽細胞への分化を誘導したところ、α-SMAの発現はミトマウス由来の線維芽細胞においてより増強していた。これらの結果よりミトコンドリアを介した代謝のリプログラミングは、線維芽細胞の分化への影響を通して、肺の線維化進展に寄与する可能性が示唆された。 ミトコンドリアなどが産生する活性酸素(ROS)は、酸化ストレスの原因となるだけでなく、シグナル伝達物質としての機能も有する。当該研究室では、TGF-β1で誘導される肺胞上皮細胞(A549)のEMTにおいて、ROSを介したシグナル伝達機構が担う役割について研究を継続していたが、ROSにより活性化された転写因子Nrf2が、Notchシグナルの活性化を通して、EMTの誘導で重要な役割を担うことを明らかにし、結果を論文にて公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ミトマウスの繁殖にやや難あり、実験の進捗に影響を与えている。
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今後の研究の推進方策 |
上記結果より、特に線維芽細胞に着目し、代謝リプログラミングによる筋線維芽細胞への分化誘導の分子メカニズムの解明を目指す。ミトコンドリア機能の低下により増加するROSや乳酸に着目し、これらの代謝産物が、TGF-β1シグナルに及ぼす影響等を解析する。さらにin vivoにおいて、ミトコンドリア 、もしくは上記代謝産物を標的とした薬剤が肺線維化に及ぼす影響を解析し、肺線維症の新規治療法としての可能性を検討する。
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