肺扁平上皮がんの多面的アプローチによる分子標的治療の開発

2021 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 20K08561
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 瀧口 裕一 千葉大学, 医学部附属病院, 教授 (30272321)
• 研究分担者: 太和田 暁之 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 教授 (10596159) [辞退] ; 椎葉 正史 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (20301096) [辞退] ; 新井 誠人 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (30396684) [辞退]
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: 扁平上皮がん / 肺扁平上皮がん / 口腔扁平上皮がん / 上皮間葉移行 / EPSTI1

研究実績の概要

3つのヒト肺扁平上皮がん（SCC）株（LK-2, EBC-1, H226）、4つの口腔SCC株（HSC2, HSC3, HSC3-M3, HSC4）を用い、それぞれの発現パターンにより各候補遺伝子の発現を修飾し、増殖能、EMT形質、細胞周期、関連遺伝子発現などを調べ、腫瘍細胞における役割を調べた。
EPSTI1遺伝子はそれぞれの正常臓器細胞と比べ、ヒト由来肺SCCで低発現（タンパク、RNAとも）、口腔SCCで高発現（タンパク、RNAとも）であった。本遺伝子のsiRNAによる抑制系および強制発現系において増殖能、浸潤能、上皮-間葉移行（EMT）などのフェノタイプ分析を行った。この結果、肺SCCでは強制発現させることにより、口腔SCCでは発現抑制をさせることにより、それぞれのin vitro細胞増殖能が低下し、細胞周期解析ではG1停止が生じ、p21発現が亢進（タンパク、RNAとも）し、CDK2, cyclin D1の発現が低下（タンパク、RNAとも）し、遊走能は低下し、N-cadherin, fibronectinの発現が低下（タンパク、RNAとも）することが示された。
すなわち増殖能、細胞周期、上皮間葉移行で見る限り、同遺伝子は肺SCCと口腔SCCで全く逆の作用を来していることが明らかとなった。従って、肺SCCでは腫瘍抑制的に、口腔SCCでは腫瘍増殖的に働き、同一遺伝子ががん種によって異なる役割を果たしていることになる。このような現象が他の遺伝子で生じているか文献検索を行ったところ、T-box family memberのひとつであるTBX2においても、乳がんと前立腺がんで過発現、非小細胞肺がんで発現低下しており、それぞれの生物学的活性を有することが示されていた。
最後にそれぞれの複数細胞株を用いたRNAアレイ解析により肺・口腔SCCにおける関連上流・下流シグナルの候補遺伝子を見つけることができた。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ほぼ計画通りに進んでおり、基礎的な準備実験はすべて成功し、目的通りの成果が得られると思われる。

今後の研究の推進方策

RNAアレイ解析により肺・口腔SCCにおいて共通して発現亢進、あるいは発現低下している遺伝子を同定し、gene ontology解析を行う。さらに関連上流・下流シグナルの候補遺伝子について機能解析を行い、肺・口腔SCCにおける増殖シグナルの詳細な解析へと結びつける予定である。

研究成果

• [雑誌論文] Current status of medical oncology in Japan and changes over the most recent 7-year period: results of a questionnaire sent to designated cancer care hospitals (2021)
  • 著者名/発表者名: Arai, Makoto Ohno, Izumi Takahashi, Koji Fan, Meng Meng Tawada, Akinobu Ishioka, Chikashi Takiguchi, Yuichi
  • 雑誌名: Jpn J Clin Oncol 巻: 51 ページ: 1622-1627
  • DOI: 10.1093/jjco/hyab135
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Rapid Response to Pembrolizumab in a Chemo-Refractory Testicular Germ Cell Cancer with Microsatellite Instability-High (2021)
  • 著者名/発表者名: Kawai, K. Tawada, A. Onozawa, M. Inoue, T. Sakurai, H. Mori, I. Takiguchi, Y. Miyazaki, J.
  • 雑誌名: Onco Targets Ther 巻: 14 ページ: 4853-4858
  • DOI: 10.1016/j.jtocrr.2020.100107
  • 査読あり
• [雑誌論文] Japanese Lung Cancer Society Guidelines for Stage IV NSCLC With EGFR Mutations (2021)
  • 著者名/発表者名: Ninomiya, K. ... Takiguchi, Y.
  • 雑誌名: JTO Clin Res Rep 巻: 2 ページ: 100107
  • DOI: 10.1111/cas.15171
  • 査読あり
• [雑誌論文] Risk factors for skeletal-related events in non-small cell lung cancer patients treated with bone-modifying agents (2021)
  • 著者名/発表者名: Saito Go、Ebata Takahiro、Ishiwata Tsukasa、Iwasawa Shunichiro、Yoshino Ichiro、Takiguchi Yuichi、Tatsumi Koichiro
  • 雑誌名: Supportive Care in Cancer 巻: 29 ページ: 4081～4088
  • DOI: 10.1007/s00520-020-05880-5
  • 査読あり
• [雑誌論文] Tumor mutation burden as a biomarker for lung cancer patients treated with pemetrexed and cisplatin (the JIPANG-TR) (2021)
  • 著者名/発表者名: Sakai, K. Tsuboi, M. Kenmotsu, H. Yamanaka, T. Takahashi, T. Goto, K. Daga, H. Ohira, T. Ueno, T. Aoki, T. Nakagawa, K. Yamazaki, K. Hosomi, Y. Kawaguchi, K. Okumura, N. Takiguchi, Y. Sekine, A. Haruki, T. Yamamoto, H. Sato, Y. Akamatsu, H. Seto, T. Saeki, S. Sugio, K. Nishio, M. Okabe, K. Yamamoto, N. Nishio, K.
  • 雑誌名: Cancer Sci 巻: 112 ページ: 388-396
  • DOI: 10.1111/cas.14730
  • 査読あり
• [雑誌論文] Randomized phase II trial of S-1 plus cisplatin or docetaxel plus cisplatin with concurrent thoracic radiotherapy for inoperable stage III non-small cell lung cancer (2021)
  • 著者名/発表者名: Shimokawa, T. Yamada, K. Tanaka, H. Kubota, K. Takiguchi, Y. Kishi, K. Saito, H. Hosomi, Y. Kato, T. Harada, D. Otani, S. Kasai, T. Nakamura, Y. Misumi, T. Yamanaka, T. Okamoto, H.
  • 雑誌名: Cancer Med 巻: 10 ページ: 626-633
  • DOI: 10.1002/cam4.3641
  • 査読あり
• [雑誌論文] Colonoscopic evaluation of diarrhea/colitis occurring as an immune-related adverse event (2021)
  • 著者名/発表者名: Yamauchi, Y. Arai, M. Akizue, N. Ohta, Y. Okimoto, K. Matsumura, T. Fan, M. M. Imai, C. Tawada, A. Kato, J. Kato, N. Takiguchi, Y.
  • 雑誌名: Jpn J Clin Oncol 巻: 51 ページ: 363-370
  • DOI: 10.1093/jjco/hyaa203
  • 査読あり
• [学会発表] Phase II trial of site-specific treatment based on gene expression and mutation profiling by NGS for patients with cancer of unknown primary (CUP)（Presidential Session） (2021)
  • 著者名/発表者名: 新井誠人 林秀敏 南博信 滝口裕一 渡辺諭美 豊田昌徳 秋吉宏平 畝川芳彦 上田弘樹 岩本康男 増田淳 向井博文 久保寿夫 富樫庸介 坂井和子 藤田至彦 冨田秀太 千葉康敬 西尾和人 中川和彦
  • 学会等名: 第18回日本臨床腫瘍学会学術集会
• [学会発表] 抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体いよる消化器関連irAEの実態ー抗PD-1抗体との比較ー（ワークショップ） (2021)
  • 著者名/発表者名: 新井誠人 滝口裕一 加藤直也
  • 学会等名: JDDW2020Kobe（第28回日本消化器関連学会週間）
• [学会発表] Pneumonitis is common in patients with sequential nivolumab and cetuximab treatment（ミニオーラル） (2021)
  • 著者名/発表者名: 新井誠人 範萌萌 太和田暁之 今井千晶 佐伯宏美 塚越慶一 米倉修二 花澤豊行 滝口裕一
  • 学会等名: 第18回日本臨床腫瘍学会学術集会
• [学会発表] 日本における腫瘍内科の現状と7年間での変化（ミニオーラル） (2021)
  • 著者名/発表者名: 新井誠人 範萌萌 太和田暁之 石岡千加史 滝口裕一
  • 学会等名: 第18回日本臨床腫瘍学会学術集会
• [学会発表] A phase II study of the efficacy of nivolumab in patients with cancer of unknown primary (CUP) (NivoCUO)（口演） (2021)
  • 著者名/発表者名: 野口瑛美 谷崎潤子 秋吉宏平 豊田昌徳 上田弘樹 滝口裕一 尾崎由記範 畝川芳彦 高橋信 沖川佳子 木寺康裕 福岡和也 中村靖司 千葉康敬 坂井和子 米盛勧 南博信 西尾和人 中川和彦 林秀敏
  • 学会等名: 第18回日本臨床腫瘍学会学術集会
• [図書] 高齢者がん治療エビデンス＆プラクティス (2021)
  • 著者名/発表者名: 滝口裕一、礒部 威、津端由佳里
  • 総ページ数: 248
  • 出版者: 南江堂
  • ISBN: 978-4-524-22821-8