研究課題/領域番号 |
20K08562
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
横田 雅也 千葉大学, 医学部附属病院, 特任助教 (70721950)
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研究分担者 |
田中 繁 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (30822051)
岩田 有史 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (90436353)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 気道上皮細胞 / 喘息 / アレルギー性気道炎症 / STAT3 |
研究実績の概要 |
前年度、HDM誘導性アレルギー性気道炎症モデルマウスの気道上皮細胞において、Day9をピークとした転写因子STAT3関連遺伝子群の発現上昇を見出した。また、気道上皮特異的STAT3欠損(STAT3-cKO)マウスでは、genetic control(STAT3-WT)マウスに比べ好酸球性気道炎症の悪化を認めたことから、気道上皮に発現するSTAT3がHDM誘導性アレルギー性気道炎症に抑制的に働くことを示した。 そこで本年度は、STAT3を介したアレルギー性気道炎症の抑制に関わる下流の分子を探索するために、STAT3-cKO、STAT3-WTマウスにそれぞれHDMを投与し、Day9に気道上皮細胞を単離しRNA-seq解析を行った。STAT3-cKOマウスの気道上皮細胞ではSTAT3-WTマウスと異なり脂肪酸不飽和化酵素であるstearoyl-CoA desaturase 1(SCD1)の発現上昇がみられなかった。野生型マウスを用いてSCD1阻害剤のHDM誘導性気道炎症に対する効果を評価したところ、対照群と比べ投与群で好酸球性気道炎症の悪化を認めたことから、SCD1がHDM誘導性アレルギー性気道炎症において抑制的に働くことが示唆された。さらにSTAT3を介したSCD1発現の役割を解析するために、対照群とSCD1阻害剤投与群の気道上皮細胞をDay9に単離し、RNA-seq解析を行った。先のRNA-seqと共通する発現変動遺伝子についてgene set enrichment解析を行ったところ、発現上昇していた発現変動遺伝子で脂質代謝に関わる遺伝子群が濃縮されていた。 以上の結果から、アレルギー性気道炎症において、STAT3-SCD1軸が脂質代謝を介し肺の恒常性維持に寄与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
気道上皮に発現する転写因子STAT3が、HDM誘導性アレルギー性気道炎症に抑制的な役割を果たしていることを見出した。さらにそのメカニズムとして脂質代謝酵素であるSCD1が関わっている可能性を示した。 これらの結果を踏まえて、本研究計画はおおむね順調に進展しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後、さらに初代培養細胞や組織特異的ノックアウトを用いた解析を行ない、アレルギー性気道炎症において気道上皮細胞のSCD1がどのような役割を果たしているかを明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験における条件検討のため、コストのかかる実験が次年度にずれ込んだ。全体の使用計画に変更はない。
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