研究課題/領域番号 |
20K08563
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
笠原 寿郎 金沢大学, 医学系, 准教授 (30272967)
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研究分担者 |
曽根 崇 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任准教授 (30420334)
木村 英晴 金沢大学, 附属病院, 講師 (40444202)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 免疫原性細胞死 / カルレティキュリン / HMGB1 / EGFR遺伝子変異陽性肺癌 / Kras変異陽性肺癌 |
研究実績の概要 |
肺癌に対する免疫療法の抗腫瘍効果の機序と最適な使用法の確立を目指して、肺癌における免疫原性細胞死を改正することを目的とした。我々は肺癌細胞株を用いて抗癌剤、分子標的治療薬の免疫原性細胞死に与える影響をDamage associated molecular patterns ( DAMPs)である、1)カルレティキュリン(CRT)、(2)HMGB1、(4)ATPを指標に解析した。CRTはフローサイトメータで、HMGB1とATPは細胞外への放出をELISAで測定した。EGFR遺伝子変異陽性のPC-9と、PC-9から樹立したgefitinib耐性細胞株PC-9/TR1(NOCTH変異株)、PC-9/TR2(NOTCH変異株)PC-9/TR3(EGFR過剰発現株)、A549(Kras変異株)を用いて、ゲフィチニブ、ペメトレキセド、シスプラチンに曝露した。陽性コントロールとしてドキソルビシンを用いた。A549においてはペメトレキセド、シスプラチン曝露した場合、陽性コントロールのドキソルビシンと同程度のCRTの細胞膜への露出と、HMGB1の細胞外液への放出を認めた。ところがEGFR遺伝子変異陽性であるPC-9ではゲフィチニブ、ペメトレキセド、ドキソルビシンのいずれにおいてもHMBG1、CRTの変化は見られなかった。ATPはPC-9、A549いずれにおいても変化が見られなかった。PC-9耐性株3種類においてはゲフィチニブではDAMPsの変化は見られなかったものの、ペメトレキセドではドキソルビシン以上のDAMPsの変化が認められた。現在DMAPsの因子であるHSPの解析を進めている。我々の知見はEGFR遺伝子変異陽性肺癌に対して免疫チェックポイント阻害剤の効果が乏しいことの理論的背景となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺癌細胞株に細胞障害性抗癌剤、分子標的治療薬を暴露し、免疫原性細胞死を評価した。免疫原性細胞死の指標であるDMAPsの測定で、一部苦労しているが、マーカーをATPからHSPに変えることと、HMGB1のELISAが安定しなかったので、測定法をELISAから免疫細胞染色に変更することで安定した結果が得られるようになった。EGFR遺伝子変異陽性細胞であるPC-9においてはゲフィチニブ、ペメトレキセドでDAMPsの上昇が見られなかったことは予期していたとおりの結果と考えられ、今後さらに裏付けをとる。具体的にはEGFR 遺伝子変異陽性の細胞であるH1975でも同様の実験を行うこと、EGFR阻害剤、抗EGFR抗体で同様の実験を行うことで、我々の知見が確認される。これらの実験は多少の実験条件を変えることで容易と考えられるので総合して順調と判断した。。
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今後の研究の推進方策 |
免疫原性細胞死の指標であるDMAPsの測定で、一部苦労しているが、マーカーをATPからHSPに変えることと、HMGB1のELISAが安定しなかったので、測定法をELISAから免疫細胞染色に変更することで安定した結果が得られるようになった。EGFR遺伝子変異陽性細胞であるPC-9においてはゲフィチニブ、ペメトレキセドでDAMPsの上昇が見られなかったことは予期していたとおりの結果と考えられ、今後さらに裏付けをとる。具体的にはEGFR 遺伝子変異陽性の細胞であるH1975でも同様の実験を行うこと、EGFR阻害剤、抗EGFR抗体で同様の実験を行うことで、我々の知見が確認される。 さらに免疫原生細胞死は放出されたDAMPsが抗原提示細胞に提示されて、樹状細胞が成熟化して初めて「免疫原生」となる。我々は単核球を分離、培養して未熟または成熟樹状細胞を得る。これに対して直接薬剤暴露を行うか、ICDが誘導されたもしくは誘導されなかった肺癌細胞を共培養し反応を検討する。これにより薬剤の影響または免疫原性細胞死の影響を評価する予定である。
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