研究課題/領域番号 |
20K08564
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
|
研究分担者 |
戸田 雅昭 三重大学, 医学系研究科, 講師 (10202201)
竹下 敦郎 三重大学, 医学系研究科, 助教 (10830490)
安間 太郎 三重大学, 医学系研究科, 助教 (80773887)
小林 哲 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (20437114)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 肺線維症 / 急性肺障害 / コリシン / 肺内細菌叢 / 細胞死 / 成長因子 / ムチン / ブレオマイシン |
研究実績の概要 |
特発性肺線維症は慢性の進行性の線維化を伴う間質性肺炎であり、中間生存期間平均3年で、5年生存率が20~40%の予後不良の慢性難治性疾患である。最近、ゲノムワイド関連解析の結果により11番染色体にIPFの関連遺伝子があると明らかになっている。遺伝子の塩基配列の解析により、MUC5Bの単塩基多型(rs35705950)を有する患者ではIPF発症の危険度が約20倍になることが示されている。一方、肺内細菌叢のアンバランスは肺線維症の病態の進行、患者の肺機能検査の悪化、死亡リスクなどと有意に相関していることが報告され、肺線維症の原因として肺内細菌叢が注目を浴びている。そこで、今回、我々はMUC5B(rs35705950)の過剰発現トランスジェニックマウスを用いて肺線維症マウスモデルを作製し、肺内細菌叢の特徴と肺線維症の病態形成への関与の検討を行っている。令和2年度では以下の実検の結果を得ました: ヒトMUC5B過剰発現トランスジェニックマウスを用いてブレオマイシン誘発肺線維症モデルを作製して肺内細菌叢由来細胞因子であるコリシンの検討を行った。コントロールとしてC57BL/6野生型マウスを用いて同様の方法で肺線維症モデルを作製した。トランスジェニックマウスでは肺線維症のAshcroftスコア、肺組織中のヒドロキシプロリンは野生型マウスに比べ、有意に低下した。血漿中のコリシンの濃度はMUC5Bトランスジェニックマウスでは、野生型マウスに比べ低い傾向が認められた。以上の結果より肺線維症の病態形成には肺内細菌叢由来細胞因子であるコリシンが関与することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究材料が元々揃っているのでおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度はヒトtransforming growth factor-(TGF)beta1とヒトMUC5Bの両者を肺組織に過剰発現する二重トランスジェニックマウスを用いた肺線維症モデルにおける肺内細菌叢由来細胞因子であるコリシンを検討する。肺線維症を自然発症したヒトTGF-beta1/ヒトMUC5Bの二重トランスジェニックマウスとコントロールの野生型マウスに麻酔薬を投与し、頚静脈から全採血し、肺から気管支肺胞洗浄液を回収し、致死させた後、肺組織を採取する。気管支肺胞洗浄液と肺組織からゲノムDNAを抽出・精製したDNAをPCRでコリシンの発現を検討する。ヒトTGF-beta1/ヒトMUC5Bの二重トランスジェニックマウスと野生型マウスの両者での肺内細菌叢由来の発現を比較検討する。 肺内細菌叢由来のコリシンは肺線維症の急性増悪を誘導することが明らかになっている。本研究では、MUC5Bトランスジェニックマウスにブレオマイシンの投与で肺線維症を発症させた後にコリシンを経気道的投与して肺線維症の急性増悪が誘導されるかどうかを検討する。急性増悪の発症は胸部CT所見、組織学的検査、肺胞洗浄液中の急性肺障害のバイオマーカーで評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)組織線維化マーカーの測定において、使用する測定キットの必要数が当初計画よりも少なく済んだため。 (使用計画)次年度に行うブレオマイシン誘発肺線維症マウスモデルの実験に使用する予定である。
|