研究課題/領域番号 |
20K08568
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
高田 美也子 鳥取大学, 医学部, 助教 (50523643)
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研究分担者 |
山口 耕介 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (60529402)
千酌 浩樹 鳥取大学, 医学部附属病院, 教授 (90283994)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腸内細菌叢 / 非結核性抗酸菌症 / NGS |
研究実績の概要 |
結核の減少傾向とは逆に非結核性抗酸菌症(NTM)による感染症が増加傾向にある。その中で起炎菌として最も多いのがM. avium complex (MAC),次にM. kansasii,さらにM. abscessusである。これらの細菌は土壌や河川などの自然界、あるいは浴室などの水回りに生育する環境菌であるため、誰でも吸入曝露する可能性があるが、感受性のある宿主にだけ感染し得ると考えられている。したがってどのような宿主が感受性に関与するか(感受性因子の同定)は本症の診断や治療にとって非常に重要であるが現在のところ明らかな機序は見つかっていない。近年、腸内細菌のメタゲノム解析により、腸内細菌叢がNK細胞機能に影響を与えていることの報告が報告されている。これまで、筆者らのグループはNK細胞機能を負にする液性分子として可溶性ULBP-2の研究を行ってきており、本課題では、非結核性抗酸菌症の発症に、宿主の免疫力の低下によるものかを調べるため、腸内細菌叢とNK細胞機能、そしてその調節因子である可溶性ULBP-2との関連について検討を行っている。本年はNTM患者の治療前の腸内細菌叢を次世代シークエンサー(NGS)解析を行った中で、ロングリードシークエンサー及びショートリードシークエンサーにより解析し、患者群の腸内細菌叢組成に関する有用な知見を得た。また同時に、可溶性ULBP2測定のために患者群の血清を採取し保存を行った。さらに、各種ELISAを検証し、患者血清において、もっとも最適な可溶性ULBP2の測定系の選択し、測定の前検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸内細菌叢、口腔内細菌叢における次世代シークエンス(NGS)の手法については、従来より多用されているショートリードシークエンサーに加え、ロングリードシークエンサーによる結果を比較した。これにより、シークエンサーの種類や、解析手法の違いによる結果の差などについての知見を得た。本知見は、今後の腸内細菌叢解析手法の最適化を図る上で、非常に有用である。また可溶性ULBP2の測定については、より感度の高いキットを選定し、安定した検出が可能となる条件を決定するなどの、予備的検討を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
非結核性抗酸菌症患者の腸内細菌叢の治療前後についての変化、及び健常者との比較を行う。方法としては、腸内細菌叢解析についてはNGSを用いて、最適化した条件で、糞便、唾液(糞便の代用としての可能性があるため)についてのメタゲノム解析を行う。また、患者群、健常者群の可溶性ULBP-2を、選択した高感度のELISA法にて測定する。対象者のNK細胞機能は末梢血を用いたフローサイトメトリーによる測定も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、患者群のみを対象とし、健常者群を次年度の検討対象としたため、NGSの必要キット数が当初想定していたより少なくなり、次年度に繰り越すことになったため。次年度では、NGSに関わる試薬等、並びにELISAキット、フローサイトメトリ―用の試薬を購入する予定である。
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