申請者らは、肺癌の多様な分子生物学的、組織学的な表現型を有する患者由来の肺癌オルガノイドライブラリーを作成し、論文として発表した(Ebisudani T et al. Cell Rep. 2023 Mar 28;42(3):112212.)。 肺癌患者から得た手術検体、気管支鏡生検、胸水から肺癌細胞を分離し、まず、EGF/IGF-1/FGF-2(EIF)、Noggin、TGF-β阻害剤、Wnt-3A/R-spondinを含む既報の条件下で培養した。次に正常気道上皮の増殖を抑制するために、Nutlin-3を追加、その後EIF除去、ERBB阻害剤追加、というオルガノイド培養方法を確立した。 オルガノイドは少なくとも5代継代すること、凍結保存後も再度培養、増殖させることが可能であった。樹立割合は、腺癌と扁平上皮13%、小細胞癌78%、大細胞神経内分泌癌100%であり、喀痰、血中循環腫瘍細胞(CTC)といった、低侵襲に得られる検体からもオルガノイドを樹立可能であった(それぞれ5株、3株)。以上、4つの主要な組織型(腺癌 21、扁平上皮癌 7、小細胞癌 12、大細胞神経内分泌癌 3)を網羅する43の肺癌オルガノイドライブラリーを確立した。 オルガノイドを免疫不全マウスに移植し、その病理組織をそれぞれ患者の腫瘍と比較した。組織学的所見と、組織学的マーカーであるNKX2-1(TTF-1)、p40、NCAM1の発現は、原発組織、オルガノイド、マウス移植片で一致した。また、遺伝子変異、コピー数異常、異数性において分子生物学的特徴を有しており、オルガノイドにおけるmRNA発現は、腫瘍におけるタンパク質発現と一致した。これらの結果により、オルガノイドが癌由来であること、および、組織病理学的、分子生物学的な同一性が保たれていること示した。
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