研究課題/領域番号 |
20K08576
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
大倉 真喜子 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (80834259)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リンパ脈管筋腫症 / リンパ管内皮細胞 / エストロゲン / エストロゲンレセプター / VEGF-R3 / リンパ管新生 |
研究実績の概要 |
リンパ脈管筋腫症(LAM)は、重症例では約10年の経過で進行性の呼吸不全をきたし肺移植が必要となる難病である。本研究は、LAMが妊娠可能な女性に発症することから、女性ホルモン(エストロゲン)に着目し、LAMのリンパ管新生の機序を解明することを目的とする。エストロゲン(E2)がエストロゲンレセプターに結合し、その複合体が標的遺伝子とするVEGF-DのレセプターであるVEGF-R3のエストロゲンレスポンスエレメント部位に結合して、転写活性化が促進されて、VEGF-R3が増加する。その結果、リンパ管内皮細胞(LEC)が増殖してリンパ管新生が進み、LAM細胞が増殖して病変が進行していくと仮説を立てた。 まず、Fluorescence-activated cell sorting (FACS) でLAM移植肺よりLECを分離した。さらに健常コントロールとして肺微小血管内皮細胞(HMVEC-L)、皮膚LEC(HDLEC)を用い、同様にFACSでLECを分離した。 添加するE2の至適濃度をヒト乳がん細胞(MCF7)を用いて決定した。その後、HDLECを用いて、E2の添加による細胞増殖解析をIncuCyteで行った。IncuCyteを用いた増殖解析は各ウェルでの誤差が非常に大きく、正確な評価することは困難であり、現在CCK-8で評価を行うことに変更している。HDLECにE2を添加するとLECのマーカーであるVEGF-R3の発現が上昇することがわかり、E2のLECへの関与は示唆された。CCK-8での評価では、E2の添加の有無で細胞の増殖に顕著な差は生じておらず、E2の添加だけではなく、VEGF-Dの添加も同時に行うことを現在試みている。また、E2の関与が、細胞増殖ではなく、細胞間の接着に変化を生じる可能性や、LECの透過性に変化が生じている可能性も考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
細胞増殖解析を当初IncuCyteを用いて行っていたが、各ウェルでの誤差が大きく、ウェルにまく細胞数や培地交換のタイミング、など調整を重ねてトライしたが、誤差の修正は困難であり断念した。その後CCK-8を用いて細胞増殖解析をトライしたところ誤差は最小限で収まるようになり、今後はCCK-8で行い評価することとした。CCK-8で現在エストロゲンのみの添加、エストロゲンにVEGF-Dも添加する、などでHDLECの再評価を行っている。本来であれば、移植LAM肺のLECやHMVEC-LのLECで評価することを終えていたかったので、遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
HDLECにエストロゲンを添加するとリンパ管内皮細胞のマーカーであるVEGFR3の発現が上昇することがわかり、エストロゲンのリンパ管内皮細胞への関与が示唆された。CCK-8での評価では、エストロゲンのみの添加の有無で細胞の増殖に顕著な差は生じておらず、エストロゲンの添加だけではなく、VEGF-Dの添加も同時に行うことを今後試みている。また、エストロゲンの関与が、細胞増殖ではなく、細胞間の接着に変化を生じたり、リンパ管の透過性に変化が生じている可能性も考えられるため、エストロゲンを添加した際の細胞間の接着や透過性の変化に着目し評価をしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画から遅れており、本来は購入して使用するはずであった細胞培養に必要な培地やプレート類、試薬が次年度に持ち越されるため。
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