本研究では、気道に腐生する真菌がアレルギー性気管支真菌症(ABPM)の発症・増悪に深く関与すると考え、真菌に直接に接する気道上皮細胞から産生される分子に着目し、新たな分子標的とそれを修飾する薬剤の創薬を目指した。2023年度のマウスを用いたin vivoの系での検討で、アスペルギルス抗原抽出液を3日間マウスに点鼻投与しアレルギー性気道炎症を惹起する系で投与3-7日目日後に気管支肺胞洗浄液(BALF)で好酸球増多が確認され、BALF中のIL-α等の気道上皮由来のサイトカインの産生増加が確認された。 IL-1αは近年、肺における誘導性気管支関連リンパ組織形成に重要な役割を担うことも報告されており、気道アレルギー疾患への関連分子が推測されている。 本研究のin vitro及びin vivoの系で気道上皮由来の炎症関連分子としてIL-1αの発現が確認された。IL-1αは真菌抽出抗原プロテアーゼ依存性にEGF受容体を介して発現し、TNF-a converting enzyme(TACE)がその発現に部分的に関与していた。 本研究では、光触媒を用いた真菌アレルゲンの無害化(アレルゲン性の除去)を目指し、紫外線照射を用いた酸化チタンの光触媒反応を検討し、アスペルギルス抗原抽出物のプロテアーゼ活性を約65%抑制すること、アスペルギルス抗原抽出物刺激による気道上皮細胞からのMUC5AC mRNAの発現を10%以下に抑制されることを確認した。この光触媒を用いた真菌アレルゲンの無害化は、EGF受容体阻害薬、TACE阻害薬と同様に、気道上皮細胞からのIL-1α等の気道アレルギー疾患関連分子の抑制に有用である可能性が示唆された。
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