研究課題
Zfp277は細胞老化に関わる分子として同定されたが、近年新たに細胞増殖が盛んな細胞において発現が上昇していることが報告されており、細胞老化と共に細胞増殖機構の制御との関わりがある可能性が考えられている。全身においてはユビキタスに発現しているが、個々の臓器における役割は明らかになっていない。そこで我々はZfp277の機能を明らかにするためにZfp277欠損マウスを用いて解析を行った。当初、Zfp277欠損マウスでは腎臓での機能に障害が生じることが想定されたが、Zfp277の欠損による嚢胞形成亢進などの明らかな異常は認められなかった。腎臓での機能を明らかにするために虚血再灌流モデルなどの疾患モデル動物を用いて検討を進めたところ、Zfp277発現は細胞の増殖亢進を伴う病態において誘導されることが明らかになった。一方で、Zfp277欠損マウスでは、成体マウスの膵臓において膵頭の成熟に異常がみられることが新たに判明した。マウスにおいて膵頭は成長と共にその数と膵頭量が増加することが知られている。Zfp277欠損マウスではこの成長に伴う膵頭の成熟化に異常が生じ、膵頭量が少ないことが判明している。しかし、耐糖能などに明らかな異常は見られておらず、正常な環境では機能的に代償されているものと考えられるが、この膵頭量の異常が加齢に伴う糖尿病の発症リスク増加につながる可能性も考えられる。以上のように、本研究において、Zfp277は生体内において細胞の増殖を伴う過程において重要な役割を担っている事が示唆された。人における相同分子であるZNF277についてもいくつかの疾患との関わりも報告されており、本研究成果をもとに今後疾患との関わりを明らかにすることが期待される。
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