研究課題/領域番号 |
20K08585
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鮎澤 信宏 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (50459517)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高血圧 / 腎臓 / ミネラロコルチコイド受容体 / アンジオテンシンII / アルドステロン / Pendrin / 食塩感受性高血圧 |
研究実績の概要 |
これまでに、食塩制限時にはAII刺激による間在細胞MR活性化により腎臓におけるPendrin発現増加が起き、一方で1次性のアルドステロン過剰時には主細胞のMR-ENaC経路の活性化により起こる代謝性アルカローシスによりPendrinの発現増加が起こることを、間在細胞特異的MR欠損マウス等を用いた実験等により証明してきた。さらに、NCC阻害薬やNCC欠損を用いた実験等により、上記二つのPendrin制御経路が、並行して起こるNCC活性化と相補的・協調的にNaCl再吸収・血圧上昇に働くことが示された。その成果を学術誌に投稿し受理された(J Am Soc Nephrol 2020 31:748-764)。また、本成果を含めて当研究室の研究成果をまとめ、reviewとして学術誌に投稿し、受理された(J Am Soc Nephrol 2021 32:279-289)。 なお、食塩制限・NCC阻害薬投与を行った間在細胞MR欠損マウスでは、血中K濃度の低下が見られた。既報において、Pendrin抑制を来すAtp6v1b1欠損マウスでは腎髄質ENaCの活性化によるK喪失が起こることが報告されている。そこで、上記の間在細胞MR欠損マウスにおいて腎髄質におけるENaC発現を評価したところ、活性化されていることが明らかとなり、これが低K血症の発症に寄与している可能性が示唆された。一方で、ROMKやBKといったKチャネル自体の発現には変化は見られなかった。 またアルカローシスによるPendrin制御を介する分子として、IRRやGRP99、soluble ACなどに注目して解析を行っている。IRR欠損マウスの作成が遅延しているため、GPR99 ligandやsoluble ACの阻害を行いアルカローシスによるPendrin制御が変化するか解析を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の前半は、新型コロナウイルス感染症の流行により一時学内への立ち入り制限があり、研究室や動物実験施設の利用ができない時期があった。以降徐々に遅れを取り戻しつつあるものの、特に動物実験において当初の計画からはやや遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
マウスにおいてアルドステロン投与やアルカリ負荷を行うと腎臓におけるPendrin発現増加が起こるが、これを介する分子としてIRRやGRP99、soluble ACなどに注目して解析を行っていく。現在、GPR99 ligandやsoluble ACの阻害が、アルカローシスによるPendrin制御を変化させるか解析を介ししている。また、IRR欠損マウスが作成でき次第、IRR欠損がアルカローシスによるPendrin制御を変化させるかも解析する。Pendrinの変化が見られば尿中NaCl排泄や血圧への影響についても解析する。 また、心不全モデルマウスにサイアザイドを投与したモデルにおいて、Pendrin活性化とその意義につき解析していく。同マウスにおけるPendrinへの介入が心不全表現型を変化させるか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により年度前半において研究室や動物実験室への立ち入りが制限された時期があり、その時期は実験遂行が困難であった。以降、実験を再開し計画の遅れは少しずつ取り戻しつつあるが、それでも予定していたよりやや遅れている。実験自体は概ね順調に進行していることから、次年度も徐々に計画からの遅れをとり戻すため、動物飼育費や実験消耗品費を中心に次年度に繰り越す。
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