研究課題/領域番号 |
20K08587
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
福住 好恭 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (20609242)
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研究分担者 |
内許 玉楓 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00529472)
安田 英紀 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00806490)
河内 裕 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60242400)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ポドサイト / スリット膜 / neurexin / nephrin |
研究実績の概要 |
我々はシナプス前末端に存在するneurexin1がポドサイトスリット膜部に発現していること、ポドサイトで発現しているneurexin1は神経組織と異なる特異的なバリアント(splice site (SS)4(+))であることを示した。しかし、neurexin1のスリット膜での役割の詳細は不明である。 Neurexin1のスリット膜のバリア維持機能における役割を明らかにするため、本年度(令和2年度)はneurexin1αKOマウスを作製し、ポドサイト病変、スリット膜機能分子の発現を解析した。また、neurexin1αとスリット膜機能分子nephrinとの相互作用解析を行った。 まず、ラット糸球体可溶化材料を用いたウエスタンブロット解析から、ポドサイトで発現しているneurexin1は主に長鎖のneurexin1αであることを示した。 次に、neurexin1αKOマウスの解析で、若齢期の10週齢では野生型マウスと比較して顕著な変化は観察されなかったが、成体期の20週齢でnephrin、podocinの著明な発現低下、及び有意な病的蛋白尿を観察した。 相互作用解析では、ラット糸球体可溶化材料を用いた免疫沈降解析によりneurexin1αとnephrinの結合性を認めた。また、HEK293細胞を用いた強制発現系の解析で、神経組織で発現しているneurexin1α-SS4(-)はnephrinとの結合性が認められなかったが、ポドサイトでの発現型であるneurexin1α-SS4(+)はnephrinと結合性を有した。 以上より、neurexin1αはnephrinと結合性を有するスリット膜構成分子であること、neurexin1αの発現低下により病的蛋白尿が誘導されることが示され、ポドサイト特異的neurexin1α-SS4(+)はスリット膜の機能維持に重要であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Neurexin1のスリット膜のバリア維持機能における役割を明らかにするため、本年度はneurexin1αKOマウスを作製し、ポドサイト病変、スリット機能分子の発現を解析した。KOマウスの作製にあたり、ポドサイトで発現しているneurexin1のアイソフォームの発現検討を行った。neurexin1αとβの両方を認識する抗体を用いたウエスタンブロット解析から、糸球体では長鎖のneurexin1αのみが発現していた。短鎖のneurexin1βの発現は大脳では発現が確認できたが、糸球体では確認できなかった。neurexin1は糸球体ではポドサイトに発現していることから、ポドサイトで発現しているneurexin1は主に長鎖のneurexin1αであることを示した。 以上の検討結果から、全身性のneurexin1αのKOマウスを作製し、解析を行った。若齢期の10週齢では野生型マウスと比較して著明な変化は観察されなかったが、成体期の20週齢でスリット膜機能分子nephrin、podocinの著明な発現低下、及び有意な病的蛋白尿を観察した。 次に、ラット糸球体可溶化材料を用いた相互作用解析で、neurexin1αはnephrinと結合することを示した。さらに、HEK293細胞を用いた強制発現系の相互作用解析で、神経組織で発現しているneurexin1α-SS4(-)ではなく、ポドサイトでの発現型であるneurexin1α-SS4(+)がnephrinと結合性を有することを示した。 以上より、neurexin1αはnephrinと結合性を有するスリット膜機能分子であること、neurexin1αの発現低下により病的蛋白尿が誘導されること、ポドサイト特異的neurexin1α-SS4(+)はスリット膜の機能維持に重要であることを明らかにし、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
Neurexin1はシナプス前末端の膜蛋白質として同定された分子で、シナプスにおいてシナプス小胞関連分子群と結合して神経伝達物質の放出の制御に関与していると報告されている。研究代表者らは以前、多くのシナプス小胞分子、シナプス小胞関連分子がポドサイトで発現していること、シナプス小胞分子SV2B KOマウス糸球体でneurexin1の発現が減少していることを報告した。以上より、シナプス小胞様小胞がポドサイトでも存在すること、neurexin1はSV2B関連分子であることが示唆された。令和3年度では、neurexin1αKOマウス糸球体におけるシナプス小胞関連分子群(SV2A、SV2B、Rab3a、synaptotagminなど)の発現をリアルタイムPCR解析により検討する。KOマウス糸球体で発現変化が見られた分子について、糸球体可溶化材料を用いた免疫沈降を行い、neurexin1αとの相互作用解析を行う。 また、neurexin1αと既知のスリット膜関連分子の相互作用の解析を行う。具体的には、neurexin1αKOマウス糸球体におけるnephrin以外のスリット膜関連分子NEPH1、ephrin-B1、CD2AP、par6などの発現をリアルタイム解析、及び免疫蛍光染色法による解析を行う。上記検討と同様、KOマウス糸球体で発現変化が見られた分子について、糸球体可溶化材料を用いた相互作用解析を行う。 Neurexin1のポドサイトの形態維持、突起形成における役割の解析を行う。マウス培養ポドサイトを用いて、neurexin1のノックダウン系(siRNA)を作製し、スリット膜機能分子、シナプス小胞関連分子、並びに既知のneurexin関連分子(neuroliginなど)の発現を免疫蛍光染色法により解析する。また培養ポドサイトの形態変化、突起形成をF-actin染色により解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が順調に進んだため、遺伝子改変マウスの飼育経費が抑えられた。さらなる解析に必要な遺伝子改変マウスの飼育経費、及び相互作用解析に必要な試薬を購入する。
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