C57BL/6マウスへのBaff遺伝子導入により、血中IgA濃度が上昇し、腎糸球体メサンギウム領域にIgAが沈着することがすでに確認されている。そこで、IgA沈着後に糸球体構成細胞にどのような遺伝子が発現するかを比較検討するため、C57BL/6マウスにBaff遺伝子を有する発現ベクターまたはmock発現ベクターを遺伝子導入し、遺伝子導入1か月半および3か月後にマウスからそれぞれ糸球体を単離し、RNAを抽出し、RNAシークエンシングを行って、Baff遺伝子導入1か月半および3か月の時点での、2群間において統計学的に有意に発現上昇または発現低下している遺伝子群の同定を行った。さらに同じRNAを用いて、定量的リアルタイムRT-PCR法にて同定遺伝子の発現を比較定量しており、RNAシークエンシングで同定された各々の遺伝子について、リアルタイムRT-PCR法でも発現量変化が同様に確認された。さらにBaff遺伝子導入4か月半で同様に単離糸球体のRNAシークエンシングを予定している。また、各々の時期において、同定された遺伝子に対する特異抗体を用いて免疫染色を行い、腎組織上で遺伝子発現している糸球体構成細胞の同定を行う。これらのデータの経時的変化を確認することにより、病理学的な発症機序が明らかになることが期待されるとともに、腎組織との対応により、どの時期の遺伝子が予後予測因子となり、どの時期の遺伝子が治療ターゲットになりうるか、候補遺伝子が同定されることが期待される。
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