研究課題
腎臓糸球体ポドサイトに発現しているダイナミン1及びダイナミン2の細胞内機能を調べることを目的とした。本年度は、ダイナミン1がポドサイトの分化時に微小管の細胞内配向を調節し、またその安定性に寄与することを明らかにした。さらに、in vitroの系を用いてダイナミン1が微小管を束化することを負染色と透過型電子顕微鏡を用いて明らかにした。精製したダイナミン1タンパクと、試験管内で調製した微小管を混合し、微小管の形態を負染色と電子顕微鏡で組み合わせて観察すると、ダイナミン1が微小管上で規則的に重合しダイナミン1が結合した微小管同士が束となる事が判明した。この結果から、ダイナミン1は、直接微小管を束ねる能力がある。ダイナミン1の存在または非存在下で、チューブリン脱重合促進剤(カルシウムイオン、podophyllotoxin)を加えて脱重合キネティクスを計測すると、微小管の分解速度が、ダイナミン1の濃度依存的に抑制されることが判明した。以上の結果から、ダイナミン1が、微小管を束ね安定化させ、ポドサイトの形態、機能維持に働いていることが強く示唆された。本研究は、米国実験生物学連合会の学会誌であるFASEB Journalの2020年12月号に掲載され、さらに本論文が12月号表紙に採択された。
2: おおむね順調に進展している
ポドサイトにおける微小管細胞骨格の制御機構の一端を明らかにすることができた。さらに、このダイナミン1による微小管制御は、ポドサイトの突起形成に必須であった。これまで、ポドサイトの足突起は、アクチン制御の関連からよく研究されてきたが、今後、一次突起形成における微小管の役割も、本研究を足かがりに解明されていくと思われる。ポドサイトに発現するダイナミンのイソフォームの役割が明らかになってきたことで、この役割がどのように相互に関連するのかという命題を新たに解析することが可能になった。
以降、ダイナミン1による微小管制御機構を構造の面から解析を進めていく。さらに、ダイナミン2の解析とアクチン制御との関連も解析を進める。
今年度分経費は、効率よく執行できたので、残金が発生した。残金は次年度使用額として来年度予算と合わせて消耗品購入に充てる予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 296 ページ: 100077
10.1074/jbc.RA120.015184
FASEB Journal
巻: 34 ページ: 16449-16463
10.1096/fj.202001240RR
Cell Structure and Function
巻: 45 ページ: 121-130
10.1247/csf.20020