研究実績の概要 |
BMP4はポドサイトのアポトーシスを誘導し、同時にメサンギウム基質増生を惹起させる因子であり腎障害を引き起こす。女性が閉経後から動脈硬化が進行しやすくなるように、エストロゲン受容体などの核内受容体と動脈硬化の関連性は強く、大動脈石灰化を誘導するBMP2/4は、核内受容体であるEstrogen Related Receptor (ERR)の調整を受けるという報告がある。核内受容体に作用するリガンド物質は、腎硬化症を含むDKDの治療薬として期待される。これらの検証報告を元に、腎硬化症を含む動脈硬化性腎障害について、ERRとBMP4の詳細な分子機序を明らかにし、腎症抑制作用を持つ低分子化合物について研究を行った。 Bmp4xTie2CreマウスとBmp4xSM22Creマウスは、血管内皮または中膜にBMP4を発現させることで腹部大動脈にプラークを形成し、腎細動脈の中膜および外膜の肥厚を引き起こし腎硬化様の病理所見を示した。糸球体虚血性変化による糸球体硬化と尿細管間質の間質障害を引き起こした。腎細動脈が肥厚した周囲の腎組織にαSMA、Desminを高発現する線維芽細胞の増殖による間質線維化を起こした。また、これらのマウスでは高齢者の腎組織で形成される三次リンパ組織と類似するリンパ組織の増加が認められ、炎症の誘導、線維芽細胞の増殖を伴った組織病変を呈した。BMP4発現マウスは血清脂質が上昇したことから、ApoE KOの腎組織解析を行った。40週齢以降のApoE KOマウスでは、腎血管周囲と糸球体内にBMP4の発現を認め、糸球体に血栓様物質の沈着と間質線維化を引き起こしていた。 ERRを介したBMP4がもたらす腎硬化症を含む動脈硬化性腎障害を抑える化合物のスクリーニングを行った。ERRを標的とするKaempferolの骨格を元に候補化合物を選定した。in vitroでのERR(α,β,γ)への作用としてBMP4、VEGF発現を抑制する化合物が得られた。
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