研究課題/領域番号 |
20K08599
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
阿部 雅紀 日本大学, 医学部, 教授 (70459890)
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研究分担者 |
松本 宜明 日本大学, 薬学部, 教授 (10199896)
福田 昇 日本大学, 総合科学研究所, 教授 (40267050)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症 / PIポリアミド / 転写因子 / USF1 |
研究実績の概要 |
今回、糖尿病性腎症の新規治療薬としてUSF1のTGF-β1プロモーターへの結合を阻害するDNA認識ペプチド化合物ピロール・イミダゾール(PI)ポリアミドの開発を目的に、令和3年度はヒトTGF-β1遺伝子プロモーターにUSF1の結合を阻害するPIポリアミドの分子設計をした。PIポリアミドの合成はFmoc固相合成法、HCTU縮合合成し、C18カラム装着HPLCにて精製した。まずヒトの腎臓メサジウム細胞を高糖刺激で、USF1の核へのtranslocationをUSF1免疫染色で観察した。合成型形質変換分子であるオステオポンチン、l-caldesmon、KLF-5のmRNA発現が上昇したのをreal time PCRで評価し、PIポリアミドの効果を確認した。 次にヒトiPS細胞より腎臓オルガノイドを分化誘導し、高糖条件での腎臓オルガノイドの形態的変化を評価し、in vitroでの糖尿病性腎症モデルの作成を試みた。Takasatoら(Nature 2015)の方法に基づき、Wntシグナル刺激物質による短時間刺激で腎臓オルガノイドを分化誘導した。通常のAPEL培地(正常糖濃度とする)と高糖濃度APEL培地(糖濃度:25mM、60mM)で腎臓オルガノイドを培養し、糸球体足細胞で陽性を示すNPHS1、基底膜で陽性を示すラミニンの免疫染色を行なった。結果として正常糖濃度、高糖濃度APEL培地において、顕微鏡下でいずれも腎胞が確認された。免疫染色では正常糖濃度培地においてNPHS1、ラミニンともに陽性であったが、25mM高糖濃度培地ではNPHS1、ラミニンの染色性の低下、60mMの高糖濃度培地での染色は認められなかった。ヒトiPS細胞由来腎臓オルガノイドを高糖刺激し、腎臓オルガノイドでの糸球体足細胞、糸球体基底膜の発現に影響を及ぼしていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
USF1結合阻害PIポリアミドの糖尿病性腎症としてSTZ糖尿病ラットに対するin vivo作用の検討において、STZ糖尿病ラットでの糖尿病性腎症による顕性蛋白尿の発症までに4ヶ月を要するため、当初の予定では令和2年度に繰り返し実験を行う予定であったが、USF1結合阻害PIポリアミドの効果が1回目の実験で観られたので、計画より早く結果を得られることができた。そこで令和3年度に行う予定であったヒトUSF1の役割の検討メサジウム細胞形質へのUSF1の役割の検討を既に令和2年度から始められ、令和3年度にヒトメサジウム細胞で高糖条件でのUSF1とTGF-β1 mRNA発現を評価し、ヒトUSF1結合阻害PIポリアミドの作用を確認することができた。 さらにヒトiPS細胞より腎臓オルガノイドの分化誘導は我々の研究室では既に作成に成功している為、今回高糖条件での腎臓オルガノイドの形態的変化評価しin vitroでの糖尿病性腎症モデルの作成を試みる事が出来た。今回、正常糖濃度、高糖濃度APEL培地において、顕微鏡下でいずれも腎胞が確認された。免疫染色では正常糖濃度培地においてNPHS1、ラミニンともに陽性であったが、25mM高糖濃度培地ではNPHS1、ラミニンの染色性の低下、60mMの高糖濃度培地での染色は認めらず、ヒトiPS細胞由来腎臓オルガノイドを高糖刺激し、腎臓オルガノイドでの糸球体足細胞、糸球体基底膜の発現に影響を及ぼしている事が認められ陽性所見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトUSF1結合阻害PIポリアミドは糖尿病性腎症の治療薬として創薬開発するので、今後はPIポリアミドの脂溶性製剤化を行う。脂溶性製剤化をすることによりPIポリアミドが消化管吸収による経口化ができる。そこで脂溶性製剤化PIポリアミドの経口化試験としてPIポリアミド脂溶性製剤をラットに経口投与し、血液、尿、胆汁および臓器を経時的に採取する。脂溶性製剤および 0.1%酢酸製剤の経口投与剤形としての評価を行う。バイオアベイラビリティが低い場合は、化合物構造から物性および消化管吸収を予測するソフトウェア「ADMET PredictorTM」でPIポリアミドが全身循環に到達できる化学的修飾法または導入を補助する併用薬物の検討を行う。その後、脂溶性製剤化したFITCラベルヒトUSF1結合阻害PIポリアミドをラットに経口投与し、心臓、大動脈、腎臓、肝臓、肺を24、48時間、1週間後に摘出し、各臓器でのFITCの蛍光を評価する。 次にヒトiPS細胞から作成したヒト腎臓オルガノイドを高糖条件に暴露し、糖尿病性腎症モデルとしての確立を目指す。現在行っているNPHS1、ラミニン染色に加え、糸球体の機能を反映しているポドシン、ネフリン染色がヒト腎臓オルガノイドを高糖条件に暴露してどう変化するか、正常糖条件での染色性として比較し、ヒト腎臓オルガノイドの糖尿病性腎症モデルを確立する。この腎臓オルガノイドの糖尿病性腎症モデルを用いて、ヒトUSF1結合阻害PIポリアミドを添加した場合の、各染色性の変化を検討し、ヒトUSF1結合阻害PIポリアミドがヒト腎臓オルガノイドの糖尿病性腎症を改善しているか評価していく。
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