研究課題
本研究では、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の進展におけるアミノ酸の関与、L-type Amino Acid Transporter 1(LAT1)の作用機序を解明し、新規治療薬の開発を目指すことを目的としている。本研究でADPKDの嚢胞形成機序が明らかとなり、さらに治療法が開発されることはADPKD患者の末期腎不全患者を減らす可能性があり、重要な研究である。さらに食事で摂取されるアミノ酸が進行に寄与することが明らかとなれば、薬物療法のみならず、普段の食事療法で進行予防ができる可能性がある。ADPKDの現遺伝子であるPkd1コンディショナルノックアウトマウス、Pkd1とLAT1のダブルコンディショナルノックアウトマウスを用いて、ADPKDの進行に対するLAT1の与える影響を解析した。Pkd1とLAT1のダブルコンディショナルノックアウトマウスでは、嚢胞が改善すると仮説をたてていたが、仮説に反して嚢胞は悪化した。この原因として、アミノ酸枯渇を感知し活性化するGeneral control non-derepressible-2/activating transcription factor 4 (GCN2/ATF4) 経路が亢進していることを明らかにした。これまで、ADPKDの嚢胞悪化に対してGCN2/ATF4が関与するという報告はなく、我々が最初に明らかにした機序である。また、Pkd1コンディショナルノックアウトマウスに対してLAT1阻害薬を投与した結果,嚢胞進行を抑えることができ、新たなADPKDの治療薬となる可能性があることを示した。さらには現在唯一のヒトで適応のあるバソプレシンV2受容体拮抗薬であるトルバプタンとの併用にその抑制効果が増大することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
マウスを用いた結果では、表現型が得られ、ウエスタンブロッティング法や免疫染色などにより、嚢胞悪化の機序の解析を順調に行っている。また、薬物投与実験でも薬物の効果が得られており、薬物がどの様に嚢胞を抑制するかの機序も順調に解析できている。
次年度は、アミノ酸枯渇を感知し活性化するGeneral control non-derepressible-2/activating transcription factor 4 (GCN2/ATF4) 経路がどの様に嚢胞形成に影響しているかを更に解析していく。また、LAT1阻害薬、LAT1阻害薬とトルバプタン併用療法が嚢胞腎の進行を抑制している機序について、あらに解析をすすめ、これらの結果をまとめて論文作成、投稿をする予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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