研究課題
申請者は、ヒストン修飾酵素阻害薬の1つであるGSK4Jが尿細管間質の線維化に与える影響について調べている。GSKJ4はKDM6A(Lysine(K) demethyltase 6A、別名UTX:Ubiquitously transcribed tetratricopeptide repeat, X chromosome)およびKDM6B(Lysine demethylase 6B、別名JMJD3:jumonji domain-containing protein 3)を阻害する薬理作用を有する。GSKJ4はH3K27のメチル化を促進させ、その標的遺伝子群の発現を抑制する作用をもつ。申請者は、ラット線維芽細胞株であるNRK49Fに線維化刺激であるTGFβおよびGSKJ4の標的であるKDM6BをsiRNAによりノックダウンさせた際の遺伝子発現変化を網羅的な解析を行って調べた。GSKJ4が標的とするヒストン脱メチル化酵素はKDM6AとKDM6Bの2つがあるが、NRK49F細胞における発現量をRT-qPCRにより定量評価したところ、KDM6Bのほうが多く発現していることが明らかとなった。そこで、NRK49FにおけるGSKJ4の役割を調べるため、KDM6BをsiRNAによりノックダウンした際のNRK49Fに与える影響を調べた。KDM6BのsiRNAによるノックダウン効率は51.6%-57.2%であった。NRK49Fに対してCtlsiRNAをかけTGFβで刺激しない群(siCtlTGFb-)、CtlsiRNAをかけTGFβで刺激した群(siCtlTGFb+)KDM6BをノックダウンしTGFβで刺激しない群(siKDM6BTGFb-)、KDM6BをノックダウンしてTGFβで刺激した群(siKDM6BTGFb+)の4群についてNRK49Fから各条件のmRNAを抽出し、先進ゲノム支援の支援を受けながらRNA-seqを行った(N=3)。その結果、TGFβによる刺激で2587の遺伝子が有意に上昇する閾値に対して、KDM6Bのノックダウンにより発現が変動した遺伝子は148個認められた。
2: おおむね順調に進展している
網羅解析結果をまとめて、論文投稿準備中である。
KDM6BをノックダウンしたときにTGFβ刺激による発現変動がキャンセルされる遺伝子群をRNA-seqによって網羅解析した結果と、GSKJ4によって影響を受ける遺伝子群を比較検討し、GSKJ4によってKDM6Bがノックダウンされることにより制御される遺伝子群を同定し、論文報告する。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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