研究課題/領域番号 |
20K08605
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
坂井 宣彦 金沢大学, 附属病院, 准教授 (60377421)
|
研究分担者 |
和田 隆志 金沢大学, その他部局等, その他 (40334784)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 腎不全 / 線維化 |
研究実績の概要 |
臓器不全の共通進展機序である線維化の病理学的共通所見として、間質における線維芽細胞集積と細胞外基質沈着が挙げられる。本研究では、腎線維芽細胞とその周囲の細胞外基質からなる線維化組織微小環境に着目して、線維化進展機序の解明および診断・治療法開発を目指している。申請者はこれまで、アクチン細胞骨格の生物学的役割に着目し、アクチン細胞骨格依存性の細胞内シグナル伝達機構が臓器線維化にはたす意義を報告してきた。近年、アクチン細胞骨格は、細胞と細胞外基質との接着装置である接着斑に結合することで、微小環境の形成に関与することが明らかとなっている。以上より、本研究では腎線維化組織微小環境に焦点をあて、とくにアクチン細胞骨格依存性細胞内シグナル伝達の意義を解明することを目的とする。令和3年度は線維芽細胞における細胞外基質産生および接着班形成におけるアクチン細胞骨格依存性細胞内シグナル伝達につき詳細な検討を継続した。その結果、腎線維芽細胞を用いたin vitro研究において、アクチン細胞骨格依存性細胞内シグナル伝達機構であるMRTF-SRFシグナルに制御を受けるインテグリンファミリーを同定した。また令和3年度は、令和2年度で作成した全身MRTF-A欠損マウスおよびコラーゲン産生細胞特異的MRTF-B遺伝子改変マウスを用いて、各種腎障害モデルでの線維化にはたす意義を、腎線維化組織微小環境関連因子に焦点をあて検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitro研究において、令和3年度は腎線維芽細胞を用いてアクチン細胞骨格依存性シグナルであるMRTFと接着斑構成因子の関与を検討した。その結果、線維化惹起因子であるTGF-β1刺激によるインテグリンファミリーの発現がMRTFシグナルに制御されていることを見出した。さらにin vivo研究では、令和2年度で作成した全身MRTF-A欠損マウスおよびコラーゲン産生細胞特異的MRTF-B遺伝子改変マウスを用いて、令和3年度に慢性腎障害モデルを作成し、腎障害、ことに尿細管間質病変にはたすMRTFの意義を検討した。その結果、全身MRTF-A欠損マウスおよびコラーゲン産生細胞特異的MRTF-B遺伝子改変マウスにおいて対照マウスに比し、線維化病変が軽減した。さらにI型コラーゲン、ファイブロネクチンやα-smooth muscle actinといった線維化関連分子の発現も、遺伝子改変マウスで低下した。今後MRTFと接着斑構成因子の関与を明らかにするべく検討する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
上記検討をさらにすすめることで、腎線維化組織微小環境における、アクチン細胞骨格依存性細胞内シグナル伝達の意義解明および治療法確立を目指す。これに並行しながら、SRF結合ドメインを有するプラスミドを安定発現する細胞株をMRTFシグナルセンサー細胞としての樹立を確立する。そしてその確立後はMRTFシグナル制御物質の発見にもつなげていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
プロモーターアッセイを行うための試薬を購入予定であったが、プラスミド導入に時間を要したため次年度使用額が生じた。次年度はプロモーターアッセイ施行予定であり、関連試薬を購入予定である。
|