研究課題/領域番号 |
20K08606
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
姚 建 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (50303128)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | connexin43 / ループス腎炎 / 抗体産生細胞 / 抗体 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
我々は、細胞膜タンパクconnexin43(Cx43)が免疫及び炎症反応を調節しているとこから、自身免疫性疾患の進行に関わっている可能性が高いと推測した。本研究はこの仮説を検証することである。令和2年度の研究では、Cx43は抗体の産生に関与していることが明らかになった。令和3年度の研究は、Cx43の調節メカニズムについて中心的に検討してきた。得られた研究結果は以下の通りである。 1)Cx43野生型(Cx43+/+)及びヘテロ接合型Cx43ノックアウトマウス(Cx43+/-)の脾臓B細胞において、LPS刺激により培養液中のIgGレベルが上昇したが、Cx43+/+方が著しく高かった。これに伴い、Cx43+/+マウス由来のB細胞は、酸化ストレス指標であるNOX2, TXNIP、P38及びタンパク質カルボニルのレベルも著しく増加した。2)LPS刺激によるB細胞IgGの産生は、NOX2及びギャップ結合インヒビター投与によって抑制された。一方でスーパーオキシドドナー投与することで、IgGの産生が誘導された。3)LPS刺激は、B細胞によるATP放出及び細胞内への蛍光分子の取り込みの影響は見られなかった。Cx43ヘミチャネルの関与は更に調べる必要がある。 以上の結果から、Cx43分子はROS産生酵素NOX2及び細胞内の酸化ストレス状態を調節することで、免疫グロブリンの産生に影響していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は計画通り進んでいる。令和3年度の研究は、B細胞の抗体産生におけるCx43の作用及びメカニズムについて解明した。Cx43は、抗体産生細胞の酸化ストレス状態を調節し、抗体の産生を制御していることが明らかになった。この結果から、抗体を産生する全身性の炎症性疾患SLEの発生・発展にCx43が関与している可能性が高いと言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、体内LNモデルにおいてCx43の役割の解明と共にCx43を標的とする治療法の可能性について検討する。 1)Cx43遺伝子改変マウスを用いて、LNモデルにおけるCx43の役割を解明する。同時に化学的なCx43阻害剤処理によって、LNの進行を観察し、Cx43の作用を明らかにする。 2)Cx43をターゲットとした新たな治療戦略を確立する。副作用が少なく、経済的で、投与しやすい臨床応用可能な多チャネル阻害剤を探索する。 3)最終年度に当たるため、これまでの研究結果をまとめ、国際誌への投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度内に注文した試薬は、年度末までに入荷できなかったため、次年度に繰越となった。使用計画としては、同じ試薬を令和4年度内に購入する予定です。
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