研究課題/領域番号 |
20K08610
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鳥巣 久美子 九州大学, 医学研究院, 准教授 (20448434)
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研究分担者 |
中野 敏昭 九州大学, 医学研究院, 准教授 (10432931)
土本 晃裕 九州大学, 大学病院, 助教 (50572103)
原 雅俊 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (60626092) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アルギニン代謝 / スペルミジン / ポリアミン / 腎線維化 / 近位尿細管 / オートファジー |
研究実績の概要 |
腎臓の線維化過程における腎臓の代謝物を調べるため、一側尿管結紮モデル(UUO)マウスを作成し、線維化腎のメタボローム解析を行った。線維化腎においてアルギニン代謝が最も変化し、代謝物の中でスペルミジンが最も線維化腎で増加していた。ヒト腎生検組織を用いてIgA腎症と生体腎移植ドナー腎とのスペルミジン染色を比較すると、間質の線維化の程度に比例して組織中のスペルミジンが増加した。マウスの線維化腎でもアルギニン代謝に関連するアルギナーゼ2(ARG2)、またその代謝物のスペルミジンは増加していた。 ヒト尿細管細胞(HK-2)においても、過酸化水素による酸化ストレスにより免疫染色においてARG2発現が亢進し、スペルミジン、スペルミジンを含むポリアミンの蓄積が増加した。スペルミジンをHK-2に添加するとNrf2が活性化され、Nrf2標的遺伝子の発現が誘導された。またスペルミジンはオートファジーを誘導した。オートファジーによりNrf2を分解へ誘導するKeap1を分解する経路がスペルミジンによるNrf2活性化の一部に関与すると考えた。スペルミジンによるNrf2活性化はオートファジー阻害薬であるヒドロキシクロロキン、Atg5ノックダウン、Atg5ノックアウト細胞で一部抑制されることをNrf2のwestern blotや標的遺伝子の発現において確認した。スペルミジン投与によりHK-2の線維化シグナルTGFbetaの分泌やコラーゲンImRNAの発現も抑制された。また過酸化水素によるミトコンドリア膜電位低下もスペルミジン投与により抑制できた。 スペルミジン産生が抑制されたARG2 KOマウスでは野生型と比較してUUOによる腎線維化が増悪し、腎臓でのNrf2活性化が低下していた。このマウスにスペルミジンを腹腔内投与すると、野生型レベルまではいかないが腎線維化は改善した。
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